2025年の鉄道路線どう変わる? 「新線」「新駅」の開業に加え「合併」も



今年2025年の日本の鉄道路線は、新幹線の開業や路線自体の廃止のような大きな変化は予定されていない。一方で大手私鉄がグループの鉄道会社を吸収合併したり、路面電車が高架橋で駅ビルに乗り入れたりするなど、今後の鉄道や公共交通のあり方に一石を投じることになりそうな動きが予定されている。おもな予定をまとめた。

夏ごろには開業するとみられる広島電鉄駅前大橋線の工事現場(2024年3月)。【撮影:草町義和】

大阪メトロ:中央線が延伸開業(2025年1月19日)

大阪・関西万博が大阪湾の人工島「夢洲」で4月13日から開催されるのに先立ち、大阪メトロ中央線が夢洲駅まで延伸される。延伸部のコスモスクエア~夢洲は鉄道法規上は大阪港トランスポートシステム(OTS)の北港テクノポート線。大阪メトロがOTSから線路施設を借り入れて列車を運行する形になる。

万博の開幕前は万博の準備関係者の輸送を行い、4月から10月まで万博会場へのアクセス輸送が行われる。夢洲は万博終了後、カジノを含む総合型リゾート(IR)などの開発が計画されている。

東武鉄道:とうきょうスカイツリー駅付近の踏切が解消(2025年3月2日)

伊勢崎線(東武スカイツリーライン)のとうきょうスカイツリー駅付近で進められている連続立体交差事業により下り線が高架化される。上り線は2022年11月に高架化済み。これにより駅の東側にある踏切が廃止される。

ただ、駅施設などを含む事業全体の工事は遅れている。すべての工事が完了するのは2028年度末の見込みだ。

JR東日本:越後線で新駅が開業(2025年3月15日)

JR線では3月15日のダイヤ改正にあわせて二つの新駅が開業する。いずれも県庁所在都市内の無人駅だ。

新潟市内では越後線・白山~新潟に上所駅が開業。付近には旧・中央卸売市場の跡地を再開発した商業施設・住宅街や新潟南高校、ユニゾンプラザなどがある。

JR九州:日豊本線で仙巌園駅が開業(2025年3月15日)

鹿児島市内では日豊本線・竜ケ水~鹿児島に仙巌園駅が開業する。周辺には島津家に関する史料などを展示する博物館「尚古集成館」や、駅名の由来となった島津氏の別邸「仙巌園」がある。

JR北海道:根室本線と宗谷本線の5駅が廃止(2025年3月15日)

JR北海道は利用者が少ない駅の廃止を推進しており、今年は5駅を廃止する計画。根室本線で東滝川・東根室の2駅、宗谷本線では雄信内・南幌延・抜海の3駅がダイヤ改正前日の3月14日限りで営業を終了する。

東根室駅は日本最東端の駅として知られており、同駅の廃止で根室駅が日本最東端の駅になる。抜海駅も無人駅としては日本最北端。この駅が廃止されると日本最北端の無人駅は勇知駅に変わる。

京成電鉄:新京成電鉄を吸収合併(2025年4月1日)

関東大手私鉄の京成電鉄が経営効率化を図るため、同社グループの新京成電鉄を吸収合併する。新京成電鉄は1946年の設立から79年で幕を閉じる。

新京成電鉄が運営する新京成線は京成電鉄に編入され、路線名を松戸線に変更。ただし運賃体系の統合は行われず、合併後も現行運賃のままだ。

南海電鉄:泉北高速鉄道を吸収合併(2025年4月1日)

京成電鉄・新京成電鉄の合併と同じ日、関西大手私鉄の南海電鉄も経営効率化を目的に、同社グループの泉北高速鉄道を吸収合併する。これにより泉北高速鉄道線は泉北線に改称。南海電鉄に編入される。

こちらは運賃体系も統合する。現在の南海電鉄線と泉北高速鉄道線をまたぐ区間では一部で現行運賃と同額になるが、大半は値下げされる。泉北高速鉄道線内のみの利用も現行運賃と同額か値下げになる。

JR東日本:奥羽本線の運休区間「非電化化」で再開(2025年ゴールデンウィーク前)

奥羽本線のうち山形・秋田県境部の新庄~院内は2024年7月、大雨の影響で土砂流入や盛土の法面(のりめん)崩壊などの大きな被害が発生し運休中。この区間は電化されているが、JR東日本は早期復旧を図るため「非電化化」で運転を再開する。再開後は気動車で運行し、架線などの施設は順次撤去する。

2024年7月の大雨では陸羽東線も土砂流入などの大きな被害が発生。鳴子温泉~新庄の運転を見合わせている。JR東日本は運転再開のめどを示していない。この区間の輸送密度は2023年度で鳴子温泉~最上が51人、最上~新庄で229人と非常に少なく、今後の情勢次第では路線の存廃論議になる可能性もありそうだ。

東京メトロ:ロンドンの鉄道運営に参画(2025年5月)

英国の首都ロンドンの東西を横断する都市鉄道「エリザベス線」の運営が香港鉄路(MTR)からGTSレールオペレーションズに移る。

GTSレールオペレーションズは世界各地で交通事業を展開しているゴーアヘッド・グループが65%を出資。残り35%は日本の東京メトロと住友商事が半分ずつ出資している。間接的ではあるものの、東京メトロが海外鉄道の運営事業に初めて参画する。

広島電鉄:駅前大橋線が開業(2025年夏ごろ)

広島駅の新しい駅ビル(3月24日オープン予定)の2階に乗り入れる新線。駅ビル内の新しい広島駅停留場から高架軌道と併用軌道で南下し、稲荷町停留場を経て比治山下停留場までを結ぶ新線として開業する。当初は新しい駅ビルのオープンと同じ春の開業が見込まれていたが、工事の遅れで夏ごろの開業になる模様だ。

広島電鉄:本線が一部廃止(2025年夏ごろ)

現在の広島駅停留場に乗り入れている系統は駅前大橋線経由で新駅ビル内の新しい広島駅停留場に乗り入れるルートに変わる。このルートから外れる現在の線区のうち、本線の広島駅~的場町は廃止。本線・的場町~稲荷町と皆実線・的場町~比治山下は、新たに設定される環状系統の電車が運行されるようになる。

伊予鉄道:松山市駅停留場が移設(2025年秋ごろ)

伊予鉄道の郊外鉄道3路線が乗り入れている松山市駅の駅前広場で再整備工事が進行中。この駅前広場に乗り入れている伊予鉄道の路面電車(松山市内線)の松山市駅停留場は松山市駅側に移設される。駅前広場全体の工事完了は2026年末の予定。

JR西日本:山陰本線が全線再開(2025年12月末まで)

山陰本線のうち山口県内の人丸~滝部が2023年夏の大雨で橋梁が傾斜するなどの被害が発生。これまで2025年度中の再開が見込まれていたが、復旧工事が順調に進んでいることから12月末までには再開の見込みだ。

一方、同じ大雨で被災した山口県内の美祢線は再開のめどが立っていない。JR西日本は自社単独での復旧は困難としており、鉄道を廃止してバス高速輸送システム(BRT)に転換する案も浮上している。

JR東日本:陸羽西線が運転再開(2025年度中)

山形県内の陸羽西線は同線に近接する道路トンネルの工事のため2022年5月から全線運休中。当初は2024年度中に運転再開の予定だったが、工事が難航していることから2025年度中の再開予定に延期されている。

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