越後線の新駅「上所駅」工事を見る 単線のはずが複線、名前は「上」でも場所は「下」



新潟市の西側を通るJR越後線の白山~新潟で進められている新駅「上所駅」の工事が終盤を迎えている。9月1日、工事の様子を見てみようと新潟駅から歩いて工事現場に向かった。

上所駅の工事現場を通過する越後線の列車。【撮影:草町義和】

もともとあった地下通路を活用

新潟駅の南口から上越新幹線と越後線の線路にできるだけ沿うようにして西へ進む。上越新幹線と越後線が離れるあたりで、新幹線の高架橋をくぐってから越後線の線路をまたぐ道路が現れる。新潟県道164号白山停車場女池線の西跨線橋だ。

西跨線橋に上がって西側の歩道から越後線の線路を眺めると、真っ白な床が目立つホームがある。越後線は単線のはずだが複線の相対式ホーム2面だ。ホームの中ほどには鉄骨が組まれている部分があり、ここに上屋が設けられるようだ。

真っ白な床が姿を現した上所駅。ホームは相対式2面だ。【撮影:草町義和】
下り線ホームの上屋。【撮影:草町義和】

越後線は全線単線とされているが、新潟駅の在来線ホーム高架化工事にあわせて白山~新潟の一部(信濃川橋梁の南側から新潟駅まで)のみ2018年に複線化された。上所駅は複線の部分に計画されたため、ホームも上下計2面になったわけだ。同駅が開業すると上所~新潟が複線になり、越後線に駅間の複線区間が出現する。

ちなみに、かつては新潟駅と信濃川南岸の工場を結ぶ専用線が1941年に敷設され、新潟駅寄りは越後線の線路に並走して複線のようになっていた。この専用線は1980年に使用を終了して1982年までに撤去されたが、線路跡地はそのまま残されたため、複線化自体は比較的容易だった。

西跨線橋を下りて上所駅の下り線(新潟方面)ホームに近づく。よく見るとホームの中ほどは床がまだ設置されていない。その脇に地下通路の入口があるが、外側の壁はやや汚れていて、最近整備した施設ではないことがうかがえる。

ホーム中ほどは床がまだ設置されていない。【撮影:草町義和】
ホームの脇にはやや汚れた地下通路の入口がある。【撮影:草町義和】

この地下通路は越後線を横断する歩道として以前から存在していたもの。上所駅の整備にあわせ、上下線のホームを連絡する地下通路としても活用することになった。入口は上り線側と下り線側ともに東西2カ所に設けていたが、このうち西寄りの入口を撤去してエレベーターを設置する。

上り線側のエレベーターの外殻とみられるコンクリート構造物(左下)。【撮影:草町義和】

駅の工事中は地下横断歩道も閉鎖されているだろうと思っていたが、普通になかに入れた。将来はエレベーターの乗り口になる壁には「かみところ いんふぉめーしょん」と題した掲示板が設置されており、工事のスケジュールに関する案内や工法の解説、これまでの工事の様子を撮影した写真などが掲示されていた。

地下横断歩道の内部。【撮影:草町義和】
工事スケジュールの案内などが掲示されている「かみところ いんふぉめーしょん」。【撮影:草町義和】

カーブ・勾配避けて直線に

上所駅は新潟駅から約1.5km、白山駅からは約1.6kmに位置し、近くには福祉センターなどで構成される新潟県の拠点施設「新潟ユニゾンプラザ」や旧・中央卸売市場の跡地を開発したテーマタウン、漫画家の魔夜峰央氏やアニメ監督の山賀博之氏の出身校として知られる新潟南高校などがある。

ホームは6両編成に対応した長さ125m、幅2.1~3mの計画で、上屋は3両分設けられる。駅員のいない無人駅で、交通系ICカードの簡易改札機や乗車駅証明発行機が設置される。

上所駅の位置。【画像:国土地理院地形図、加工:鉄道プレスネット】
上所駅の上り線側。【撮影:草町義和】

白山~新潟に新駅を設けようという話は遅くとも1984年に浮上。1991年の新潟都市圏パーソントリップ調査報告で新駅が必要とされた。上所地区では1996年、ユニゾンプラザが開館。2007年に中央卸売市場が移転して跡地の再開発が計画されると、新駅の具体化に向けた動きが活発になった。

2017年には新潟市とJR東日本が連携協定を締結し、設置場所の検討が本格化。候補地としてユニゾンプラザ付近とテーマタウン付近のほか、上所に隣接する下所島地区の西跨線橋西側も検討された。

その結果、ユニゾンプラザ付近やテーマタウン付近は線路のカーブ・勾配や埋設管の設置状況などを考慮して除外。直線で勾配がなく駅を整備しやすい西跨線橋西側が選ばれた。この場所は既設の地下横断歩道を活用できるという利点もあった。2022年2月、新潟市とJR東日本が基本協定を締結。昨年2023年4月にJR東日本が事業基本計画の認可を受けて事業に着手した。

上り線ホームも上屋が設けられる。【撮影:草町義和】
下り線側の中継信号機。【撮影:草町義和】

こうした経緯もあり、新駅は従来から「上所」という仮称で呼ばれていたが、実際の設置場所は下所島地区になった。正式な駅名は地元団体が公募結果のなかから「上所」「所島」「南高校前」の3案に絞り込み、新潟市を介してJR東日本に要望。同社は2023年6月の着工式典で「(仮称が)計画段階から地域に浸透している」として、上所駅を正式な駅名として発表した。

上所駅は2025年春に開業の予定。【撮影:草町義和】

駅の事業費は約27億円とされ、新潟市が全額負担。開業は来年2025年春の予定で、1日の利用者数(乗降人員)は約4600人を見込む。

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