日本最東端駅「64年ぶり」変更か 東根室駅の廃止検討、過去には「もっと東」の駅も



日本最東端の駅として知られる根室本線・東根室駅(北海道根室市)について、JR北海道が来年2025年春のダイヤ改正にあわせ廃止する方向で検討していることが分かった。

日本最東端の駅として知られる根室本線の東根室駅(2014年)。【撮影:草町義和】

北海道文化放送が今年2024年8月24日、東根室駅について「関係者によりますと、最近は周辺のバス路線が充実したことで利用者が減少。JR北海道が廃止を検討していることが分かりました」と報じた。廃止されれば日本最東端の駅が64年ぶりに変わる。

JR北海道は近年、1日の利用者数(乗車人員)が3人以下の駅を中心に廃止しているが、東根室駅の近年の乗車人員は10人台で廃止の目安を大きく上回っていた。しかし昨年2023年、根室交通の路線バス「落石線」が運行開始。根室本線の並行ルートだが東根室駅から1.4kmほど離れた根室高校を経由しており、落石方面からの通学はバス利用のほうが利便性が高くなっていた。

現在、日本が実効支配していて誰でも容易に訪問できる地域では最も東に位置する北海道の根室。ここに鉄道が通ったのは大正期のことだが、日本最東端の駅はその後何度か変わっており、現在の東根室駅よりもっと東にも駅があった。

1921年に国鉄の根室本線が全通。この時点では同線の終点である根室駅(東経145度34分57秒)が日本最東端の駅で、東根室駅は存在しなかった。しかし昭和に入って1929年、私鉄の根室拓殖軌道(のちの根室拓殖鉄道)が開業。根室の市街地から根室半島南岸を東に進んで歯舞村(現在の根室市)までの15.5kmを結び、終点の歯舞駅(東経145度45分10秒)が根室駅に代わって日本最東端の駅になった。

それから3年後の1932年、根室拓殖軌道は歯舞駅から珸瑤瑁村(現在の根室市)の鳥戸石(東経145度48分あたり?)まで延伸する計画の許可を受けている。鳥戸石は納沙布岬(現在の日本の実効支配地域で容易に訪問できる場所としては最東端)から南西に少し離れたところ。日本最東端の駅がさらに東へ移るはずだったが、これは実現しなかった。

1934年には根室駅と根室港を結ぶ根室本線の貨物支線が開業し、国鉄の最東端駅は根室港駅(東経145度35分13秒)に。ただし旅客を扱っている国鉄駅に限定すると、引き続き根室駅が国鉄最東端だった。

ちなみに戦時中の1943年、国鉄の根室駅から北東へ約7kmの地点に旧海軍の根室第2飛行場が着工し、1945年6月に一部完成している。このとき根室駅と飛行場を結ぶ専用線も整備されたが、飛行場の一部完成から数カ月後には終戦を迎えており、専用線も十分な活躍を得ないまま消滅した。

根室拓殖鉄道は戦後、トラックの荷台に客車を載せたような格好の気動車「銀龍号」を導入し、その特徴的ないでたちが鉄道マニアのあいだで注目されたことがある。しかし自然環境が厳しいうえに人口希薄な地域のため経営は芳しくなく、1959年に廃止されてしまう。これにより日本最東端の駅は国鉄・私鉄を問わず貨物支線の根室港駅に。旅客扱いを行っている駅に限れば根室駅に戻った。

最東端駅の変遷(年は最東端駅の期間)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

しかし2年後の1961年9月1日、根室駅の手前1.5kmに東根室駅(東経145度35分50秒)が開業する。このころ、駅が設けられた地域は市街地化が進んでいた。根室本線はいったん東に進んでから西へ戻るようにして根室駅に入るルートだったため、その手前に設けられた東根室駅は根室駅や根室港駅よりも東に位置した。かつての歯舞駅よりは12kmほど西寄りではあるものの、日本最東端の駅になった。

ただ、東根室駅は無人駅として設置され、入場券などを記念に購入することができなかった。そのためか、ガイドブックなどでは駅員がいる根室駅を日本最東端の駅として紹介し、「無人駅を含めると東根室駅」といった注釈を付けていたことがあった。なお、1965年には根室~根室港の貨物支線が廃止されている。

その後、分割民営化で国鉄がJR北海道に変わったものの、東根室駅はずっと日本最東端の駅であり続けている。仮に報道の通り東根室駅が2025年春に廃止された場合、日本最東端の駅は根室駅に変わる。同駅が最東端駅に返り咲くのは96年ぶり(旅客扱いを行っている駅に限れば64年ぶり)だ。

東根室駅が廃止されると根室駅が再び日本最東端の駅になる。【画像:PoN太/写真AC】

しかし、根室駅が日本最東端の駅であり続けられるかどうかは不透明だ。東根室駅や根室駅を含む根室本線・釧路~根室(花咲線)は輸送密度が2023年度で221人。コロナ禍前の2019年度でも238人で、JR北海道は上下分離方式の導入など地元の公的支援を条件に維持する「黄色線区」と位置付けている。逆にいえば地元の支援がなければ廃止される可能性もある。

JR北海道は根室本線に接続している釧網本線も黄色線区に位置付けており、情勢次第でこの地域の鉄道が根こそぎ消滅するかもしれない。もはや日本最東端の駅が今後どうなるかを気にしていられる状況ではないのかもしれない。

※東経は現在の世界測地系基準、東根室駅を除き推定

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