箱根の新・早雲山駅が公開 ケーブルカー初の昇降バー式ホームドア、展望デッキも



小田急グループの箱根登山鉄道と箱根ロープウェイは7月8日、リニューアル工事がほぼ完了した早雲山駅(神奈川県箱根町)の新駅舎を報道陣に公開した。老朽化した施設の更新とバリアフリー化が目的。明日7月9日から使用を開始する。

7月9日から使用開始する新しい早雲山駅。【撮影:草町義和】

早雲山駅は、箱根登山鉄道の鋼索線(箱根登山ケーブルカー)と箱根ロープウェイが接続する拠点駅。新しい駅舎は地上2階、地下1階建てで、木目をベースにデザインされた。

地下1階にある箱根登山ケーブルカーの乗車ホームには、昇降バー式のホームドアを設置された。ホームの大半はスロープ状の傾斜がついているため、昇降バーも斜めに傾いて設置されているのがユニークだ。ただしホームの末端は床が平らで、昇降バーも傾いていない。ここから1階のコンコースまでエレベーターで移動できるようになっており、車椅子でもケーブルカーを利用しやすくしている。

地下1階にある箱根登山ケーブルカーのホーム。車両は3月に導入されたばかりの新型だ。【撮影:草町義和】
斜めに設置されている昇降バー式ホームドアの動作。【撮影:草町義和】

関係者によると、ケーブルカーの早雲山駅には床下点検用のピットもあり、ホーム床面からピット底面までかなりの高さがある。このためホームドアを設置して利用者の転落防止を図ることにしたが、ここで問題になったのがホームの傾斜だった。

ケーブルカーのホームは傾斜がついているため、横に開くタイプの標準的なホームドアを設置すると斜めになり、重量バランスが悪くなる。そこで小田急電鉄小田原線の愛甲石田駅で実証実験(2017年)が行われた、昇降バー式ホームドアの採用が考えられた。

小田急の愛甲石田駅で実証実験が行われた昇降バー式ホームドア。【撮影:草町義和】

バーが上下するタイプなら構造が単純で、重量バランスも悪くならないと考えられたことから、昇降バー式を開発した高見沢サイバネティックスに検討を依頼。その結果、昇降バー式の設置は可能との回答が得られ、早雲山駅に設置することにしたという。

■展望デッキには足湯も

駅舎の1階にはケーブルカーの改札などの駅施設のほか、多目的トイレや授乳室、救護室なども設置してバリアフリー化を図った。

1階にはケーブルカーの改札がある。【撮影:草町義和】
1階の授乳室と救護室。【撮影:草町義和】

2階はロープウェイ乗り場に加え、新しい観光スポット「cu-mo箱根」(クーモ箱根)を整備。相模湾や強羅の街並み、箱根外輪山を一望できる展望デッキを設けたほか、無料で利用できる足湯なども設けられた。また、2階のトイレはパウダーコーナーを女性用だけでなく男性用にも設けているのが特徴だ。

2階はロープウェイ乗り場と新しい観光スポット「クーモ箱根」がある。【撮影:草町義和】
2階の男性用トイレにはパウダーコーナー(左)がある。【撮影:草町義和】
箱根外輪山を一望できる展望デッキ。脇に見えるテーブルの下に足湯がある。【撮影:草町義和】

クーモ箱根は、箱根登山鉄道や箱根ロープウェイと同じ小田急グループの不動産会社UDSが企画・運営監修を担当。旅行関係の出版社JTBパブリッシングの直営飲食店「るるぶキッチン」がプロデュースしたスイーツやオリジナルグッズを販売する。名前は早雲山駅の「雲」と、箱根の伝統工芸である寄木細工を表す「木(もく)」にちなんでいるという。

強羅~早雲山間を結ぶ箱根登山ケーブルカーは、5代目となる新型車両が3月から運転を開始。箱根ロープウェイも来年2021年4月には早雲山~大涌谷間のゴンドラを新型に更新する予定だ。

また、昨年2019年の台風19号の影響で運休している箱根登山鉄道の鉄道線(箱根登山電車)・箱根湯本~強羅間が7月23日に再開する予定。小田急グループはこれを機に箱根の観光輸送の強化を図る方針だ。