福島地震の脱線受け「地震対策左右動ダンパ」検討 新幹線試験車「ALFA-X」で検証



昨年2022年3月の福島県沖地震で東北新幹線の列車が脱線してから1年が過ぎた。JR東日本は今年2023年4月7日、同地震を受けて進めてきた地震対策の検討状況や今後の方向性などを発表。線路からの逸脱を防止する機能の向上を目指すほか、新幹線E956形試験電車「ALFA-X(アルファエックス)」で検証を進めている新しい地震対策の導入も検討する。

地震対策左右動ダンパの検証が行われている「ALFA-X」。【画像:N100teda/wikimedia.org/CC BY-SA 4.0】

福島県沖地震の発生で脱線したのは、東北新幹線の福島→白石蔵王を走行していた下り仙台行き「やまびこ223号」。後日の申告も含め5人が負傷したとされる。対向列車がなかったことに加え、脱線防止用ガード(L型ガイド)がレールに引っかかって車体が線路から大きく離れなかったこともあり、被害が抑えられた。

JR東日本によると、非常ブレーキの動作から停止するまでのあいだに地震による若干の揺れがあったが、その後停止してすぐに地震による強い揺れがあり、全68軸中60軸が脱線した。同社は当初、脱線した60軸のうち50軸でL型ガイドなどがレールに引っかかったとしていたが、その後の調査の結果、実際に引っかかっていたのは48軸で、残り12軸はレールを乗り越えていた。

これを受けてJR東日本は、脱線現場近くの新白石き電区分所で観測された地表の揺れをもとにシミュレーションを実施。地震の影響で車体が揺れた際、台車の片側を押し下げる力が働き、反対側の車輪が浮き上がった際に車体が線路に対して左右に移動し、脱線したものと推定した。

こうしたことからJR東日本は、「改良排障器」の導入による逸脱防止性能の向上を図る考え。先頭車両に搭載している排障器とE5系中間車の一部に搭載しているセラミック噴射装置に対し、L型ガイドと同じ高さまで延長した構造にしてレールに掛かりやすくする。

L型ガイドと改良排障器。【画像:JR東日本】

また、新たな脱線防止対策として「ALFA-X」で検証中の「地震対策左右動ダンパ」の導入も検討する。地震によって発生する左右方向の大きな揺れに対し、ダンパに高い減衰力を発揮させて車体の揺れを抑え、脱線しにくくするという。

JR東日本が検証を進めている地震対策左右動ダンパ。【画像:JR東日本】

地上施設の耐震補強対策の強化なども推進する。JR東日本によると、福島県沖地震では一部のラーメン橋台柱が損傷して桁の沈下が発生。この橋台は特徴的な構造形式・荷重条件を持っていることから柱損傷時に桁が沈下、傾斜する可能性のあることが分かったという。同社は同じ特徴を持つラーメン橋台に対して2022年度から優先的に補強を行っているとしつつ、今後さらに前倒しして補強を進めるとしている。

JR東日本は地震発生時に列車を緊急停止させる早期地震検知システムについても、今回の地震で得られた知見を用いて改良を継続する方針。同社によると、福島県沖地震ではシステムが正常に動作。新幹線の列車は主要動が線路に到達する前に停車したという。

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※日付の誤記を修正しました。(2023年4月9日15時35分)