JR東日本は4月4日、羽田空港アクセス線(仮称)の鉄道施設変更・工事施行が国土交通省に認可されたと発表した。6月に起工式を行い、本格的な工事に着手する。開業予定時期はこれまで2029年度としていたが、2031年度に変更した。
認可されたのは「東山手ルート」の田町駅付近~東京貨物ターミナルと「アクセス新線」の東京貨物ターミナル~羽田空港新駅(仮称)。東山手ルートの大半は休止中の貨物線を改修して活用し、アクセス新線は地下トンネルを新設する。今年2023年1月31日に東山手ルートの鉄道施設変更認可を受け、3月24日にはアクセス新線の工事施行認可を受けた。
工事区間の延長は約12.4kmで、住所表記では起点が東京都港区芝浦1丁目、終点は大田区羽田空港3丁目。土木構造物はシールドトンネル・開削トンネル・高架橋・地平・擁壁(掘割)で構成される。起点側に駅は設けず、山手線・京浜東北線の田町駅付近で東海道線の上下線に接続させる。終点側には羽田空港新駅を設置する。
工事費は概算で約2800億円。このうち約700億円は国の空港整備事業のうちJR東日本に関係するトンネル本体などの工事費になる。
開業は2031年度の予定。JR東日本はこれまで2029年度の開業予定としていたが、それより2年の延期になる。JR東日本の広報担当者は取材に対し「(鉄道施設変更認可・工事施行認可の手続きの過程で)工期を精査した結果」と話した。
羽田空港アクセス線は東京都心と羽田空港を結ぶJR東日本の新線計画。新宿(西山手ルート)・東京駅(東山手ルート)・新木場(臨海部ルート)の3方面から既設線の活用などで東京貨物ターミナル駅に至るルートを整備し、ここから羽田空港に向かうアクセス新線を整備する。JR東日本は東山手ルートとアクセス新線を先行整備することを決め、2021年1月にアクセス新線の第1種鉄道事業許可を取得。環境影響評価の手続きなどを進めていた。
羽田空港アクセス線(東山手ルート+アクセス新線)が開業すると、宇都宮線・高崎線・常磐線方面から上野東京ラインや東海道本線を介して羽田空港への直通運転が実現。東京駅からの所要時間は現在約30分だが、羽田空港アクセス線が開業すると12分短縮の約18分になる見込みだ。
東山手ルート+アクセス新線の工事概要
東山手ルート+アクセス新線の工事区間は大きく分けて「東海道線接続区間」「大汐線改修区間」「東京貨物ターミナル内改良区間」「アクセス新線区間」「羽田空港新駅」の五つになる。各区間・駅の概要は次の通り。
●東海道線接続区間(約1.5km)
田町駅の東京駅寄りにある山手線の引上線を撤去。山手線外回り・京浜東北線南行・東海道線上りの線路を順次移設し、東海道線の上下線のあいだにスペースを確保する。このスペースから東海道線下りと東海道新幹線の下をくぐり、東海道本線貨物支線(大汐線)に接続する線路を単線で整備する。
●大汐線改修区間(約3.4km)
1998年から休止中の東海道本線貨物支線(大汐線)にある既存の橋梁や高架橋を活用。各種設備の状態を調査したうえで必要な改修や改良を行う。
●東京貨物ターミナル内改良区間(約2.5km)
東京貨物ターミナル内改良区間では、JR東日本が保有している用地を使い、羽田空港アクセス線の運行に必要な留置線や保守基地線を整備する。面積は約2万3000平方m。
●アクセス新線区間(約5.0km)
新たな線路を敷設する区間。東京貨物ターミナルから公共施設や道路、運河の下を地下トンネルで通り抜けて羽田空港新駅に向かう。最大深度は約50mで、延長約4.2㎞の複線シールドトンネルを構築。羽田空港新駅に至る新たな線路を敷設する。
●羽田空港新駅
第1旅客ターミナルと第2旅客ターミナルのあいだにある空港構内の道路下に整備する地下駅になる。幅は最大で約12m、延長は約310m。地下1階に1面2線の島式ホームを整備し、第2旅客ターミナルへは高低差のない移動が可能になる。空港島内のシールドトンネルと開削トンネルは国土交通省が空港整備事業として整備する予定だ。
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