今年2025年も各地の鉄道で新型車両の導入や、ほかの鉄道事業者から譲り受けた中古車両の導入が予定されている。2025年中に導入予定、または導入の可能性がある車両をまとめた。
伊予鉄道:7000系(2025年2月)
郊外線向けに計画された完全新造の新型車両。2月にデビューする予定で、2027年3月までに18両(3両6編成)が導入される計画だ。老朽化した700系(もと京王帝都電鉄5000系)を更新する。
伊予鉄道が中古車両ではない新型車両を導入するのは1995年製造の610系以来30年ぶりだが、610系は一部機器に廃車発生品を使用している。そのためか、伊予鉄道は「完全新設計の車両を導入するのは67年ぶり」としている。
一畑電車:8000系(2025年3月2日)
2016年にデビューした7000系ベースの新型車両。車内にはロングシートとクロスシートのどちらにも転換可能なデュアルシートを設ける。まず1両が3月2日に営業運転を開始する予定。その後も2025年度から2026年度にかけ3両が導入される計画で、5000系(もと京王電鉄5000系)を更新する。
JR東日本:E233系0番台グリーン車(2025年3月15日)
中央線快速・青梅線の10両編成に2両増結して12両編成とするために計画されたグリーン車。従来のE233系やE235系のグリーン車はドアが片開きなのに対し両開きを採用。乗降のスムーズ化を図る。
すでに2024年10月から順次運用に入っているが、現在は「お試し期間」として普通車の扱い。実際にグリーン車として運用が始まるのはダイヤ改正が実施される3月15日からになる。
西武鉄道:8000系(2024年度)
小田急電鉄から8000形を譲り受けて改造した6両編成。外装はグラデーションを用いたデザインに変わる。3月ごろから国分寺線で運用されるとみられ、最終的には約40両が導入される。大手私鉄がほかの鉄道事業者の中古車両を導入するのは非常に珍しい。
西武鉄道は電力消費量が多い旧型車両の更新を促進するため、新造車両の導入に加え、電力消費量が少ないVVVFインバーター制御装置を搭載した中古車両の導入を計画した。同社はVVVF中古車を「サステナ車両」と位置づけており、8000系はその第1弾となる。
京成電鉄:3200形(2024年度末)
旅客需要の変化に柔軟に対応できるよう、4・6・8両の編成に組み替えることを可能とした新型車両。複数の編成をつないでの運用を想定し、編成両端の前面ドアを中央に設けた。まず6両1編成が遅くとも3月には営業運転に入るとみられ、その後も順次増備される予定。
三岐鉄道:もとJR東海211系(2024年度以降)
三岐線で運用している既存の電車(もと西武鉄道)を更新するため、JR東海から211系を30両譲り受けた。実際に営業運転で使用するのは24両の計画。211系の地方私鉄への譲渡はこれが初めてだ。
2024年7月に譲受を発表した時点では2024年度(2024年4月~2025年3月)以降に順次導入するとしていた。2024年中は導入しておらず、2025年から営業運転に入るとみられる。
東武鉄道:80000系(2025年春)
野田線の従来車両の更新用として計画された新型車両。春にデビューして最終的には125両(5両25編成)が導入される計画だ。
野田線の現在の車両は6両編成だが、80000系の導入を機に1両少ない5両編成に変わる。このため80000系の25編成中18編成は4両を新造。残る1両は従来車両のうち60000系の車両を流用する。
嵐電:モボ1形「KYOTRAM」(2025年春)
老朽化したモボ101形やモボ301形の更新用として計画された新型車両。先頭部は半円形ドームの形状を採用しているのが特徴だ。まず春に1両がデビューする予定。2028年度までに7両が導入される計画だ。
JR東日本:仙石線用E131系(2025年度冬ごろ)
205系の更新用として56両(4両14編成)の導入が計画された。導入時期は2025年度(2025年4月~2026年3月)の冬ごろとしており、早ければ12月に導入される可能性がある。
JR東日本は地方の直流電化線向け標準車両としてE131系を開発して2021年から各地に導入しているが、その仕様は各線区ごとに異なる。仙石線用のE131系は幅広車体を採用し、先頭部にはドアを設けず側面は4ドア。車内座席はロングシートになる。
JR東日本:HB-E220系(2025年度下期)
キハ100系やキハ110系の更新用として導入される新型車両。ディーゼルエンジンで発電した電気か回生ブレーキにより発生した電気で走るハイブリッド式を採用する。
32両が製造される計画。高崎エリアの八高線に16両(2両8編成)、盛岡エリアの東北本線・釜石線に16両(2両6編成と1両4編成)が導入される。営業開始時期は2025年度下期(2025年10月~2026年3月)とされており、早ければ10月に導入される可能性がある。
東京臨海高速鉄道:71-000形(2025年度下期)
りんかい線向けの新型車両で、1996年の同線の開業以来運用されている70-000形を更新する。
2027年度上期までに80両(10両8編成)を導入することが計画されており、まず1編成が2025年度下期(2025年10月~2026年3月)に営業開始の予定。早ければ10月に営業運転を開始する可能性がある。
西武鉄道:もと東急9000系(2025年度以降)
8000系に続く「サステナ車両」の第2弾。東急電鉄から9000系を譲り受けて4両編成で運用する。導入路線は多摩川線・多摩湖線・西武秩父線・狭山線。2025年度(2025年4月~2026年3月)以降、約60両を順次導入する計画で、早ければ12月までに営業運転を開始する可能性がある。
天竜浜名湖鉄道:新型車両(2025年度以降)
老朽化した現在の車両の更新用として新型車両を導入する。計画では2025年度(2025年4月~2026年3月)以降、毎年1両ずつ導入するとしており、早ければ12月までに導入される可能性がある。
甘木鉄道:新型車両(2025年度から)
車両の老朽化に対処するため新型車両を2025年度(2025年4月~2026年3月)から導入する計画。早ければ12月までにデビューする可能性がある。
近江鉄道:もと西武2000系(?)
西武鉄道から2000系4両(2両2編成)を譲り受けた。導入の具体的な時期は明らかにされていないが、2024年10月に現地搬入されており、2025年中に営業運転に入る可能性がある。
地方の鉄道ではJRや大手私鉄の中古車両を譲り受けて導入することが多いが、一畑電車や伊予鉄道のように新造の新型車両を導入する計画も目立つ。JRや大手私鉄も車両を長く使い続けるようになって中古車両の「出物」が減っていることや、経営の厳しい地方鉄道の公的支援制度が充実して新造車両を導入しやすくなったことが背景にありそうだ。
逆に西武鉄道のように、新造での導入が基本だった大手私鉄で他社の中古車両の導入を計画しているケースがあることも特筆される。コロナ禍の影響で経営が厳しくなるなか、大量の旧型車両を早期に更新してランニングコストを抑えるためには、比較的状態のいい中古車両を導入したほうが得策という判断があったのかもしれない。
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