芸備線「利用者極少区間」JR西日本が沿線自治体に交通計画の策定など申し入れ



芸備線の列車。【画像:峠ちゃん/写真AC】

JR西日本は6月14日、芸備線沿線の県と市に対し「地域公共交通計画に対する申入れ」を同日までに行ったと発表した。同線の利用状況などを踏まえ利用促進を検討する。

JR西日本が申し入れたのは、岡山県と同県内の新見市、広島県と同県内の庄原市。対象地域は「芸備線庄原市~新見市内の駅と沿線地域」としており、新見市内の備中神代駅から庄原市内の山ノ内駅の区間が該当する。

JR西日本は人口減少や少子高齢化に加え、道路を中心としたまちづくりの進展で芸備線を取り巻く環境が大きく変化しており、地域のニーズに適した地域公共交通計画の策定や見直しが急務としている。関係する地方公共団体と同社を中心とした協議・検討を行うが、必要に応じて有識者や検討対象地域の交通事業者の参画も想定している。

芸備線の備後落合駅。【撮影:草町義和】

芸備線は備中神代~広島間159.1kmを結ぶローカル線。列車は伯備線の新見駅から芸備線に乗り入れており、実質的な運行区間は新見~広島間になる。中国山地を横断する路線で、区間によって利用者数の差が激しく、とくに新見市から庄原市にかけての区間は極端に少ない。

JR西日本の公表資料によると、1日の平均通過人員(2019年度)は広島の通勤圏の狩留家~広島間で7987人。三次~狩留家間は713人だが、これは水害による不通(2018年~2019年)の影響が大きく、2017年度は1410人だった。

一方、三次以東は1000人を大幅に割り込んでいる。県境を越えて新見・庄原の両市を結ぶ備中神代~東城間は2桁の86人。庄原市内の東城~備後落合間はさらに少ない13人だった。庄原市と三次市を結ぶ備後落合~三次間は若干多い238人。

JR西日本の長谷川一明社長は今年2021年2月、鉄道廃止・バス転換なども視野に入れてローカル線の運営を見直す考えを明らかにしていた。一方、3月にはJR西日本・富山県・富山市の3者が共同会議を設置し、高山本線の猪谷~富山間の活性化に向けた協議を進めている。

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