高山本線「富山区間」活性化に向けJRと県市が共同会議 「地域鉄道の課題」解決目指す



JR西日本・富山県・富山市の3者は3月26日、「高山本線ブラッシュアップ会議」を設立すると発表した。利便性の向上などによる同線の活性化を目指す。第1回会議は3月30日に開催される予定。

高山本線のJR西日本区間で運転されている普通列車。【画像:fuku41/写真AC】

3者によると、富山市は高山本線を「『公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり』の重要な公共交通軸」と位置付け、JR西日本と連携して列車の増発などを行ってきた。富山県も高山本線のネットワーク機能の強化などに取り組んでいる。

3者はこれまでの取り組みの深度化を図るとともに、地域住民の足の確保や地域活性化を推進するため、高山本線の活性化策をさまざまな観点から検討する会議を3者共同で設立することにした。

この会議では「富山県内はもとより全国的に地域鉄道が直面する課題解決のモデルケースにつなげる」ことを目標とし、活性化策の実現方法や可能性も含めて議論。2022度中の取りまとめを目指すという。

LRT化や経営分離など視野に検討か

高山本線は岐阜~富山間の225.8kmを結ぶ鉄道路線。このうち猪谷~富山間の33.6kmは全区間が富山市内を通っており、JR西日本が運営している。

JR西日本の長谷川一明社長は2月18日の記者会見で「内部補助によって成り立ってきたローカル線の今後のあり方について課題提起をスピードアップし、関係の皆様方と一緒になって、持続可能な地域交通を実現していきたい」と発言。軽量軌道交通(LRT)やバスへの転換も視野に入れ、ローカル線の運営を見直す方針を示した。高山本線の活性化に向けた共同会議の設立も、その一環とみられる。

猪谷~富山間は1日1km平均の利用者数(輸送密度)が2288人。1980年代に実施された国鉄ローカル線の見直しでは、原則として輸送密度が4000人未満の路線を廃止対象としていた。経営が悪化しているJR北海道も2016年、自社単独では維持が難しい線区を公表。輸送密度が200~2000人の線区は、利用者が少ない駅の廃止や運賃値上げ、沿線自治体が線路施設を保有してJR北海道が運行する上下分離方式の導入などを軸に鉄道維持を検討するとしていた。

猪谷~富山間は2000人を若干上回っている程度で、経営的には厳しい状況。同じ富山市内のJR線で、輸送密度が2000人前後で推移していた富山港線は2006年にLRT化が図られ、経営も第三セクターの富山ライトレール(現在は富山地鉄に合併)に移った。近年の輸送密度は3000人台で推移しており、活性化が図られている。3者の会議でも、こうした方策を視野に入れながら検討が進められるとみられる。