広島アストラムライン延伸「全線開業は6年遅れ」所要時間増加で利用者見込み4割減



広島市はアストラムラインの延伸計画について、本年度2023年度中の特許申請を断念する考えを2月22日までに明らかにした。一部区間の先行開業も断念し、全線開業は従来の予定より6年ほど遅れる。

アストラムラインの列車。【撮影:草町義和】

アストラムラインは本通~広域公園前18.4kmを結ぶ路線。広島市の第三セクター「広島高速交通」が運営し、ゴムタイヤで専用通路を走る案内軌条式システム(AGT)の新交通システムを採用している。

広島市は「新交通西風新都線」として広域公園前~西広島7.1kmの延伸を計画。終点の西広島駅ではJR山陽本線の西広島駅と広島電鉄の広電西広島駅に連絡する。同市の来年度2024年度予算案では整備推進費として2億6933万円4000円(国庫補助・市債含む)を計上。橋梁の詳細設計や車両基地の基本設計、環境影響評価を進める。

従来のスケジュールでは、本年度2023年度にも軌道法に基づく軌道特許を申請するとともに環境影響評価や都市計画手続きを進め、「令和一桁代半ば」(2023~2024年ごろ)には用地取得と工事に着手。「令和一桁代後半」(2025~2028年ごろ)に広域公園前~石内東(仮称)を部分開業し、「令和10年代初頭」(2029~2030年ごろ)には全線開業の予定としていた。

広島市によると、軌道特許の申請で必要になる需要予測の交通実態調査が2018年の豪雨災害や2020年以降のコロナ禍で遅延し、2023年度中の申請が困難な状況に。現在は申請に向け国との協議を進めている。環境影響評価は現在、準備書の作成を進めている段階。都市計画決定手続きは予備設計を進めて延伸計画案を取りまとめたところで、今年2024年3月にも延伸計画案の地元説明会を実施し、その後法的手続きに入る。用地取得は2027年度から着手する予定。

こうしたことから全体のスケジュールが遅れており、広域公園前~西広島の全線を一括で2036年度ごろの開業を目指す計画に変更したという。

アストラムラインの開業区間(青)と延伸区間「西風新都線」(赤、点線はトンネル)の位置。延伸区間の駅名は仮称。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

事業費も大幅に増加する見込み。2015年に広島市が示した金額は570億円だったが、同市が今回示した新しい事業計画では人件費や資材費の高騰で190億円増え、約1.3倍の760億円とした。延伸区間は単線で計画されており、すべての駅で上下の列車を行き違いできる構造に変更したことも影響した。

このほか、新事業計画では運行速度を駅の停車も含めて精査し、運行速度を従来計画の30km/hから27km/hに下げた。これにより広域公園前~西広島の所要時間は従来の約14分から2分長い約16分になる。1日の利用者数の見込みはこれまで1万5200人としていたが、所要時間が長くなることを踏まえて4割ほど減らし、9100人とした。ただし既開業区間を含む利用者数の見込みは従来の7万2900人より若干増えて7万3100人になるという。

西広島駅からさらに延伸して本通駅に至る「新交通新都心線」については、広島市は新交通西風新都線の完成後に事業化を検討する考えを示している。

《関連記事》
アストラムライン「延伸」地質調査など計上、山陽線高架化も 広島市2022年度予算案
広島電鉄「PASPY」終了後の10カード「一部利用できなくなるサービス」も