東京都などは8月3日、JR南武線・谷保~立川の連続立体交差事業(連立事業)の実施に向け作成した都市計画素案を公表した。この区間の踏切をなくして交通渋滞や地域分断の解消を図る。
都市計画区間は国立市谷保から立川市柴崎町3丁目の約4.2km。このうち約3.7kmが連立事業の実施予定区間になる。現在線路がある場所とほぼ同じ位置に幅約11m、高さ(地上~欄干上面)約9~12mの複線高架橋を整備して高架化。高架橋の北側に幅約6~16mの付属街路(側道)を整備する。
高架化される駅は矢川・西国立の2駅。ホームは両駅とも長さを約130mとし、現在の6両編成に対応する。ホームの幅は約5~8mを確保する。矢川駅は幅約19m、高さ(地上~屋根上面)約15mの高架駅を整備。ホームの配置は現在と同じ島式ホーム1面2線になる。駅の北側にある交通広場の再整備も計画している。
西国立駅は現在の場所からやや西側にずらし、幅約19m、高さ約14mの高架駅を整備。ホームの配置は現在の相対式2面2線から島式1面2線に変わる。駅の西側には交通広場を整備する。同駅のそばにある保守基地は、矢川~西国立の線路沿いにある立川第3中学校付近に高架式で移設する。
工事は仮線工法を採用。まず線路脇に仮線を敷くための用地を取得して上下線を仮線用地に移す。その後、現在線路がある場所に高架橋を建設。まず上り線を高架に切り替え、続いて下り線を高架に切り替える。仮線用地には側道を整備する。
事業予定区間には踏切が21カ所あり、このうち「開かずの踏切」の青柳踏切(矢川~西国立)を含む17カ所の踏切を高架化で解消する。地上の谷保駅から高架橋に移る部分にある2カ所の踏切は高架下の高さを確保できないため廃止し、通行できなくなる。谷保駅の前後2カ所にある踏切は残す計画だ。
事業費は約960億円、工期は13年を想定している。東京都などによると、都市計画素案の作成に際しては地下式も比較検討したが、地下化後に通行できなくなる踏切が7カ所になり高架式より5カ所増加する。事業費は高架式の倍近い約1820億円、工期も高架式より1年長い14年になる。こうしたことから高架式を選んだという。
南武線は川崎~立川の35.5kmなどを結ぶJR線。川崎市内は武蔵中原・武蔵新城の2駅を含む区間が1990年までに高架化され、矢向~武蔵小杉でも連立事業の着手に向けた動きが本格化している。東京都内側では矢野口・稲城長沼・南多摩の3駅を含む区間が2013年までに高架化された。
谷保~立川の連立事業は2018年4月に新規着工準備が採択され、事業化に向け東京都や国立市、立川市、JR東日本による調査・検討が進められていた。このほど都市計画素案の作成が完了し、地元住民向けの説明会が今年2023年8月3日から行われている。最後の説明会は8月8日18時から立川第3中学校の体育館で行われる予定。
東京都などは今後、都市計画決定に向けた手続きを進めるとともに環境影響評価の手続きも並行して進め、都市計画事業の認可を経て工事に着手することを目指す考えだ。
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