東京都の臨海地下鉄「羽田空港接続」も検討へ 事業計画案を公表、6km・7駅を整備



東京都の小池百合子知事は11月25日の記者会見で、東京都心と臨海副都心エリアを結ぶ「都心部・臨海地域地下鉄構想」(臨海地下鉄)の事業計画案を取りまとめたと発表した。全長約6kmに7駅を設けることを想定。今後はつくばエクスプレス(TX)や羽田空港への接続も検討する。

事業計画案は東京都の事業計画検討会(委員長:岸井隆幸政策研究大学院大学客員教授)が11月に取りまとめたもの。それによると、想定ルートは東京駅付近から東京国際展示場(東京ビッグサイト)付近まで。東京駅付近からJR線に沿うような形で銀座まで南西に進み、銀座から南東へほぼまっすぐ進んでビッグサイト付近に至る。

全長は約6.1km。東京駅、新銀座駅、新築地駅、勝どき駅、晴海駅、豊洲市場駅、有明・東京ビッグサイト駅の7駅(いずれも仮称)を設けることを想定した。周辺路線との乗換利便性や周辺のまちづくりとの連携、鉄道空白地帯の解消などを考慮して選定したという。

事業計画案で示された想定ルートと想定駅の位置。【画像:国土地理院地図、加工:東京都】
想定駅の選定理由など。【画像:東京都】

事業費は概算で約4200億~5100億円。地下高速鉄道整備事業費補助か都市鉄道利便増進事業費補助の活用を想定し、30年以内に累積資金収支が黒字転換するものとした。費用対効果(B/C)は1以上としている。

小池知事は記者会見で「この構想は都心部と臨海部をつなぐ基幹的な交通機関、背骨としての役割が期待されている」「晴海の選手村跡地や築地のまちづくりなど沿線の利便性が向上し、個性豊かなまちの魅力が一層発揮される」と話し、早期の事業化に向け引き続き検討する考えを示した。

東京都が2021年4月に策定した臨海エリアのまちづくり方針「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」では、臨海地下鉄を「2040年までの実現を目指す取組」として位置付けている。しかし開業の目標時期について小池知事は会見で「実際にどれくらいの進み具合になるのかということについては、これから順次お伝えすることになると思う」と述べ、明言を避けた。

JR東日本の構想路線に接続か

今回の事業計画案は臨海地下鉄の単独整備を想定して事業費や採算性などを算出しているが、今後の検討事項についてはつくばエクスプレス(TX)延伸構想との接続と羽田空港への接続を挙げた。TX接続は「国際競争力強化の拠点であるつくば国際戦略総合特区と臨海部との対流促進が図れるとともに、事業性の向上も見込まれる」とし、羽田空港への接続は「臨海部や首都圏の国際競争力をより強化するため」としている。

臨海地下鉄とTX(左)、羽田空港(右)への接続イメージ。【画像:国土地理院地図、加工:東京都】

TXは秋葉原駅から東京駅への延伸が構想されており、交通政策審議会が2016年に答申した『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』(198号答申)ではTX延伸と臨海地下鉄の接続を盛り込んでいた。一方、羽田空港への接続はJR東日本が構想している羽田空港アクセス線の臨海部ルートと重なるため、臨海地下鉄と臨海部ルートの接続などが考えられる。臨海部ルートは東京臨海高速鉄道りんかい線や同線の車両基地回送線を活用して整備することが考えられている。

羽田空港アクセス線の臨海部ルートは東京臨海高速鉄道りんかい線(写真)や同線の車両基地回送線などを活用して整備することが考えられている。【撮影:草町義和】

臨海地下鉄は交政審198号答申では「事業性に課題があり、検討熟度が低く構想段階」とされていた。しかし2021年7月に交政審が答申した『東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について』(371号答申)では、臨海部の大規模開発計画が進展していることを背景に「事業化に向けて関係者による検討の深度化を図るべき」との文言が盛り込まれた。

これを受けて東京都は同年9月に検討会を設置。ルートや駅位置などの検討、概算事業費の算出、需要予測や事業性の検証などを進めている。

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