東京港の埋立地にポツンと残る、東京都港湾局専用線の「旧晴海鉄道橋」こと晴海橋梁。専用線の廃止後も残されたが事実上の放置状態だった。しかし数年前から補強・補修工事が始まり、近いうちに遊歩道として一般開放される見込みだ。2月1日、工事の進展具合を見ようと現地を訪ねた。

建設当時の色を再現
旧晴海鉄道橋は、江東区の豊洲ふ頭と中央区の晴海ふ頭を結ぶ道路橋(春海橋)の脇にある。4年ほど前に見に行ったときは、中央部のアーチ橋が赤さびていて、その前後のコンクリート桁橋も赤さびたレールが雑草に覆われるようにして敷かれていた。
アーチ橋は晴海寄りの半分が木箱のようなもので覆われており、豊洲寄りの半分は薄めの緑色に塗られた鉄骨が姿を現している。港湾局によると、この緑色は旧晴海鉄道橋が完成した当時の色という。木箱のようなもので覆われているのは、塗装が完了した直後で乾燥するまでの保護のためだろうか。


コンクリート桁橋は晴海寄りが工事ヤードのようになっており、さまざまな機材が置かれている。豊洲寄りは専用線時代にはなかった手すりが設置されており、レールの合間はウッドデッキ仕上げのような床板で覆われていた。


橋脚と橋桁は耐震補強工事が実施済み。橋脚と橋桁のあいだには、以前はなかったグレーの鉄骨が追加で設置されており、橋脚も一部修繕した形跡がある。

日本初の構造を採用
東京都港湾局の専用線は1957年に開通。総武本線貨物支線(越中島貨物線)の越中島駅(現在の越中島貨物駅)から豊洲ふ頭と晴海ふ頭に延び、両ふ頭に陸揚げされた石炭や農産物、雑貨などを運んだ。

旧晴海鉄道橋も専用線の建設にあわせて設置されており、長さは190.3m、幅は3.8m。中央のアーチ橋はローゼ橋と呼ばれるもので、アーチの部材と補剛桁がほぼ同じ程度の厚さを持っているのが特徴だ。前後のコンクリート桁橋はプレストレスト・コンクリート(PC)を用いた連続桁。ローゼ橋・連続PC桁橋ともに日本の鉄道橋としては初採用だった。
専用線はトラック輸送へのシフトに伴い1989年までに廃止。線路も豊洲・晴海の再開発に伴い大半が撤去された。その一方、旧晴海鉄道橋は廃止当時のまま残され、港湾局が閉鎖したうえで管理するようになった。


港湾局は2016年ごろから旧晴海鉄道橋の活用策を検討。日本初の鉄道ローゼ橋・連続PC桁橋ということもあり、「本橋の歴史的な価値を残しつつ遊歩道化」することを決めた。
工事は2021年2月に着手。橋脚の補強や落橋防止システムの整備など耐震補強工事を2023年4月までに完了し、橋梁上部の補修工事も昨年2024年3月に完了した。現在は最終段階となる遊歩道化工事が進行中。レールや枕木、バラストを撤去してひび割れを補修したうえで防水層を設置し、レールや床板を敷き直している。

遊歩道化工事の事業期間は今年2025年6月27日までとされており、工事が順調に進めば今夏には一般開放されるとみられる。開放後は旧晴海鉄道橋の豊洲寄りにある春海橋公園の公園施設として一体的に管理される計画だ。
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