東京港の貨物専用線「旧晴海鉄道橋」で補強工事 日本初「ローゼ」「PC」遊歩道に



豊洲と晴海のあいだに架かる旧晴海鉄道橋。晴海寄り(左)に橋脚を囲む鉄板が見える。【撮影:草町義和】

かつて東京都港湾局が使用していた貨物専用線の橋りょう「旧晴海鉄道橋」(東京都中央区・江東区)で、今年2021年2月から耐震補強工事が行われている。将来の遊歩道化に向けた事業の一環。

現在行われているのは晴海寄り下部の耐震補強工事で、大規模地震が発生したときの倒壊を防ぐための補強と落橋防止装置の設置が行われる。8月上旬の時点では橋脚を囲む鉄板などが設置されていた。晴海寄り下部の工期は来年2022年1月まで。豊洲寄り下部の耐震補強工事は、本年度2021年度から来年度2022年度にかけ行われる予定だ。

東京都港湾局の専用線は1957年、総武本線から分岐している貨物支線(越中島貨物線)の終点・越中島駅(現在の越中島貨物駅)から晴海ふ頭と豊洲ふ頭に延びる貨物専用線として開通。ふ頭に陸揚げされた石炭や農産物、雑貨などを運んだ。

この専用線の江東区豊洲と中央区晴海のあいだに架けられたのが晴海橋りょう(旧晴海鉄道橋)で、当時の国鉄が東京都から工事を受託して建設した。長さは190.3mで、幅は3.8m。中央部はアーチ橋の一種であるローゼ橋、その前後はプレストレスト・コンクリート(PC)の連続桁で構成されている。いずれも鉄道橋としては初めて採用されたもので、歴史的建造物としての価値があるという。

専用線はトラック輸送へのシフトに伴い1989年までに廃止。その後、晴海・豊洲の両ふ頭とも再開発が進んで線路の大半は撤去されたが、旧晴海鉄道橋など一部に遺構が残っている。東京都は2016年頃から、両ふ頭の臨海公園などを結ぶ遊歩道として、旧晴海鉄道橋の活用を検討していた。

東京都港湾局専用線のルート(青=廃止、赤=未成線)。【画像:国土地理院地形図、加工:草町義和】

上部の補修と遊歩道の整備は2023年度以降の予定。上部は部材補強のほか塗装塗り替えなどを行う。遊歩道は「本橋の歴史的な価値を残しつつ、バリアフリーにも配慮した魅力的な歩道」(東京都港湾局)として整備するという。

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