新金貨物線の旅客化「新宿終点」段階整備など検討 東京都葛飾区、2020年度調査結果まとめる



新金貨物線を走る貨物列車。【撮影:草町義和】

東京都葛飾区は3月、同区内を南北に縦断する総武本線貨物支線(新金貨物線)の旅客線化に向けた調査・検討について、2020年度の調査結果をまとめた。国道6号(水戸街道)との平面交差の可能性や段階的整備の手法などを調査、検討した。

水戸街道との平面交差については、貨物列車の運行継続や踏切遮断時間を増加させないことを条件に検討を実施。前年度2019年度の調査では、水戸街道の踏切遮断時間を増加させない方法として、旅客列車については踏切の手前でいったん停車させ、道路信号が赤信号のあいだに列車を通過させる方法の検討を行っていた。

この通過方法について国土交通省の鉄道局に相談したところ「道路信号と連携していたとしても、鉄道信号に基づいて旅客列車が運行通過するのであれば、鉄道事業法上ただちに問題があるとはいえない」との見解を得たとし、今後は鉄道事業法を適用した検討を進めていくことにした。一方で鉄道の技術基準との整合性や道路信号に基づいて制御する鉄道信号システム、運行定時制の確保、過走などに対する安全確保が課題となることから、これらの検討を今後進める。

段階的整備の手法の検討では、水戸街道との交差部以南を第1整備検討区間とし、この区間の先行整備や京成高砂駅との乗換動線の検討を実施。第1整備検討区間の終点となる水戸街道付近の新宿駅(にいじゅくえき、仮称)には1面2線の島式ホームを整備し、折り返しと貨物列車の待避を行うための線路を増設することを想定した。第1整備検討区間だけなら水戸街道との交差は発生しない。

新金貨物線旅客化の段階的整備のイメージ。【画像:葛飾区】
新宿駅の整備イメージ。【画像:葛飾区】

このほか、新金貨物線の高砂駅(仮称)と京成線の京成高砂駅が500mほど離れており、両駅の連絡方法も課題になっている。京成高砂駅では連続立体交差事業(連立事業)の実施が検討されており、「(連立事業の実施にあわせて整備されることが見込まれる)側道を利用してアクセスすることが考えられる」としたが、連立事業での駅の位置や構造などが確定していないことから、同事業の進ちょくにあわせて検討していく必要があるとした。

このほか、新金貨物線の線路は使わず、同線の上方空間にモノレールや自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT、新交通システム)を整備する案も検討。1kmあたりの建設費はモノレールが約100億円、AGTが約80億円とした。しかし線路の上方空間には門型鉄塔の高圧線が設置されており、これをどうするかが課題になる。

葛飾区は今後も検討を進めていく方針。水戸街道との平面交差や運行主体・施設保有主体を明確化した事業スキーム、段階的整備の手法を引き続き検討する。

新金貨物線は、総武本線の小岩駅(東京都江戸川区)から総武本線を東京寄りに進んで新小岩信号場駅(新小岩駅の小岩寄り)でスイッチバックするように分岐して北上し、常磐線の金町駅(葛飾区)を結ぶ8.9kmの貨物支線。JR東日本の路線だが通常はJR貨物が運転する貨物列車しか走っておらず、旅客列車は臨時列車がときどき走る程度だ。

葛飾区は同区内で不足している南北の鉄道交通を充実させるとして、新金貨物線のうち新小岩信号場~金町間6.6kmを活用した旅客列車の運行を構想している。2018年度の調査では概算事業費を200~250億円としていた。