京王電鉄「値上げ」申請も通学定期は一部「値下げ」へ 相模原線の加算運賃を廃止



京王電鉄は3月24日、国土交通大臣に鉄道旅客運賃の変更認可を申請した。認可された場合、同社は10月に運賃を値上げする。同社が運賃を値上げするのは、消費税率の引き上げによるものを除くと1995年以来28年ぶり。

加算運賃が廃止される京王相模原線。【撮影:草町義和】

全体の改定率は13.3%で、11.5%の増収を見込む。普通運賃は初乗り(4kmまで)が切符で現行130円から10円値上げの140円に。ICカードは現行126円から14円値上げの140円になる。これ以外の距離帯は最大42円の値上げとして値上げ幅を抑えるという。

新宿~高尾山口の普通運賃は切符・ICカードともに430円。切符は40円の値上げ、ICカードは42円の値上げだ。現在は切符とICカードの運賃額がすべての距離帯で異なるが、改定後は一部の距離帯で同額になる。

普通運賃の現行額と申請額。【画像:京王電鉄】

通勤定期運賃は普通運賃の値上げに合わせた改定になり、割引率(現行37.6%)は変更しない。通学定期運賃は家計負担に配慮して運賃額を据え置き、割引率を現行の77.4%から80.1%に引き上げる。

定期運賃の現行額と申請額。通学定期は据え置く。【画像:京王電鉄】

このほか、京王電鉄は運賃変更の認可後、相模原線・京王多摩川~橋本で20~22kmの距離帯に設定されている加算運賃の廃止を届け出る予定だ。加算運賃は同線の建設費回収を目的に設定されたが、回収が進んだことから2018年に引き下げられており、今回の値上げを機に完全に廃止する。

新宿~橋本の普通運賃(切符)の場合、現行額は38.1kmの普通運賃(370円)に20円の加算運賃を加えた390円だが、改定後は普通運賃のみ410円に。値上げ幅は実質20円に抑えられる。また、新宿~橋本の通学定期運賃(大人1カ月)は現行額が加算運賃を含め4820円だが、通学定期の運賃据え置きと加算運賃の廃止に伴い、実質的には310円値下げの4510円になる。

京王電鉄によると、コロナ禍の影響で利用者が大幅に減少。2018年度との比較では2020年度が33.5%減、2021年度でも26.1%の減少で、関東大手私鉄のなかでは減少率が最も大きい。その一方、2021年10月に発生した車内傷害事件を受けた防犯対策や、ホームドアなどのバリアフリー設備の整備や維持管理を行う必要があり、不足する費用の一部を旅客に負担してもらうことにしたという。

同社は今後、ホームドアの全駅整備やホームと車両の段差・隙間の解消、防犯・セキュリティ対策の高度化、ターミナル駅の大規模改良、座席指定列車の拡充、鉄道乗車ポイントサービスの導入などを推進するとしている。

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