蒲蒲線「10年間で1兆円」東京都大田区が経済効果を算出 「建設投資の4倍」主張



東京都大田区は4月16日、新空港線(蒲蒲線)の経済波及効果を算出したと発表した。東急電鉄の蒲田駅と京急電鉄の京急蒲田駅を結ぶ第1期区間を整備すると、開業後10年間で1兆円以上の効果があるとした。

京急蒲田駅と蒲蒲線への直通運行が考えられている東急多摩川線の列車。【撮影:草町義和、加工:鉄道プレスネット】

算出には関西大学の宮本勝浩名誉教授が協力。蒲蒲線の整備と蒲田のまちづくりによる建設投資額(約2500億円)や同線の利用者の消費額、定住人口や事業所の増加による投資額を「直接効果」、直接効果により生まれる原材料を扱う会社の売上増加額を「1次波及効果」、直接効果と1次波及効果に関係する企業・店舗などで勤務する人たちの所得増加による消費増加額を「2次波及効果」とし、これらを合計した経済波及効果を算出した。

第1期区間の開業初年度は、東京都と埼玉県・神奈川県の一部で約4600億円の経済波及効果があるとしした。このうち約4000億円は建設投資の経済波及効果で、残りの約600億円は消費支出効果。大田区だけで見た場合は約2900億円の経済波及効果があるとした。

開業後10年間の経済波及効果は大田区で約5700億円、同区を含む東京都と埼玉県・神奈川県の一部では約1兆200億円とし、建設投資額に対して約4倍の効果があるとした。

大田区が算出した第1期区間の開業初年度と開業後10年間の経済波及効果。【画像:大田区】

大田区によると、同区の鉄道沿線まちづくり構想では蒲蒲線の整備により、羽田空港と東京圏各都市のアクセス利便性向上や往来者の増加、文化的交流・ビジネスの活性化、沿線まちづくりの促進に加え、整備効果が大田区のみならず東京圏に広く波及することを見込んでいる。

その効果を定量的に検証するため、第1期区間の整備と蒲田駅周辺のまちづくりによる経済波及効果を推計。建設投資額に人々や企業の消費額などを加えて算出した。その結果、大田区だけでなく広範囲に大きな経済波及効果が見込まれることが分かったという。自区以外の地域にも蒲蒲線の整備のメリットが及ぶことを主張することで、早期の事業化につなげたい意図があるとみられる。

蒲蒲線は東急多摩川線の矢口渡駅から地下トンネルで蒲田駅と京急蒲田駅を経由し、京急空港線の大鳥居駅までを結ぶ約4kmの新線構想。東急多摩川線と京急空港線からの直通運転が考えられている。距離が離れている蒲田駅と京急蒲田駅のアクセス改善に加え、東京都北西部・埼玉県南西部と羽田空港とのアクセス利便性の向上を図る。

蒲蒲線から東京都北西部・埼玉県南西部にかけての鉄道路線と蒲蒲線の整備による所要時間の変化。【画像:大田区】

矢口渡~京急蒲田の約2kmを第1期区間として整備することが考えられており、第1期区間の総事業費は約1360億円の見込み。都市鉄道利便増進法に基づく路線として上下分離方式による整備が想定されており、総事業費の3分の2を国と東京都、大田区が支出する。2022年10月、第1期区間の整備主体となる第三セクター「羽田エアポートライン」が大田区と東急電鉄の出資により設立された。

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