有楽町線・副都心線「7000系」いつ引退? 新型17000系デビューで「全車引退」始まる



東京地下鉄(東京メトロ)有楽町線・副都心線の新型車両「17000系電車」が2月21日の朝、営業列車として初めて運転された。しばらくは一部の列車だけで運用されるとみられるが、これから2年ほど増備が続き、そう遠くない時期に珍しくない車両になるだろう。

17000系の導入に伴い引退する7000系。【撮影:草町義和】

一方で有楽町線・副都心線で現在運用されている東京メトロの車両のうち、「7000系電車」が17000系に置き換えられる形で引退する。すぐにすべての車両が引退するわけではないが、数年後には半世紀近い活躍に終止符を打つことになる。

■ベースになった千代田線の6000系

7000系は、地下鉄車両の新時代を築いた「6000系電車」のマイナーチェンジ版といっていいだろう。6000系は帝都高速度交通営団(営団地下鉄)時代の1968年から1990年にかけ36編成350両(試作車を含む)が製造され、千代田線で運用された。

7000系のベースになった6000系。【画像:ジュンP/写真AC】

営団地下鉄は千代田線の建設にあわせ、外部の有識者を交えた6000系の設計委員会を設立。当時の最新技術を積極的に採り入れ、40年以上使用できること、20年後も古さを感じさせないこと、保守が容易なこと、あらゆる面で効率の高い車両を目指すことといった開発方針が決められた。

こうして完成した6000系は、車体にアルミ合金を採用して軽量化を図り、モーターの制御方式に回生ブレーキ付き電機子チョッパ制御を採用することで消費電力の削減を図った。編成両端の先頭部は、当時の車両としては珍しい「左右非対称」のデザインを採用したのが大きな特徴だった。

地下トンネルを走る車両は、原則として先頭部に脱出用の非常ドアを設置しなければならず、従来の車両は車両間を通れるようにする貫通ドアと同様、中央に非常ドアを設ける左右対称のデザインが標準的だった。

これに対し6000系は、非常ドアを向かって左側に寄せており、これによりドア右側の運転台スペースが拡大。運転士の視界が広がったほか、機器類も操作しやすくなるなどの改善が図られた。また、非常ドアは内側にステップが付いており、下に降ろす形で開くと線路に降りる階段になるというユニークな構造を採用している。

ちなみに左右非対称のデザインは、米国サンフランシスコのベイエリア高速鉄道(BART)が当時開発を進めていた電車のデザインの影響を受けている。

■副都心線の開業で変化

7000系は有楽町線の建設にあわせて計画された。営団地下鉄は6000系を今後の標準車両として位置付けたため、7000系も6000系とよく似た構造になった。車体はアルミ合金製で、先頭部も6000系と同じ左右非対称、ステップ付き非常ドアを設けたデザインだ。

帯が黄色一色だった頃の7000系。【撮影:草町義和】

ただし制御方式は自動可変界磁式(AVF)チョッパ制御を採用し、電力消費量のさらなる削減を図っているのが特徴だ。6000系は千代田線のラインカラーにあわせて緑の帯で装飾されたが、7000系も有楽町線のラインカラーにあわせ、黄色の帯で装飾された。

こうして1974年10月30日、有楽町線の池袋~銀座一丁目間が開業し、7000系の営業運転も始まった。当初は5両編成で運用されたが、1983年の池袋~営団成増(現在の地下鉄成増)間の延伸開業に伴い、中間車を増結。その後も路線の延伸や東武東上線・西武池袋線への乗り入れなどに伴い1989年まで改良を加えながら増備され、最終的には340両(10両編成34本)の陣容になった。

ちなみに、初期に製造された車両の貫通路は幅の広いキノコ型になっていたのが大きな特徴で、編成内の見通しが非常に良かった。また、1988年に製造された車両は営団地下鉄としては初めて最初から冷房装置を搭載。それ以前に製造された非冷房車両も冷房装置を搭載する改造が行われたが、改造期間中は編成中の半分だけ冷房車という珍編成もみられた。

■残るは17000系の計画と同数

7000系のベースになった6000系は「20年後も古さを感じさせない」という方針で開発されたが、逆にいえば20年以上が過ぎた段階で古さを感じさせる車両になったともいえる。7000系は最初の車両の製造から22年が過ぎた1996年から、モーターの制御装置をIGBT素子のVVVFインバーター装置に更新するなどのリニューアルが行われている。

2008年には有楽町線と車両を共通で運用する副都心線の開業に伴い、両線用の新型車両として10000系電車がデビュー。7000系は有楽町線と副都心線の両方で利用できるよう改造され、帯の色も両線のラインカラー2色(黄色・茶色)に変更された。しかし、一部の編成は廃車され、残った編成の多くも8両編成に短縮された。現在も運用されている7000系は180両(10両編成6本、8両編成15本)だ。

今後、7000系は17000系の増備にあわせ、順次引退して2022年度中には全車引退する。17000系の導入計画数は、7000系の残存数と同じ180両(10両編成6本、8両編成15本)。17000系は4月までに10両編成6本が納入される計画のため、まず10両編成の7000系が先に姿を消すとみられる。デビューから49年後の2022年度末(2023年3月)頃には8両編成の7000系も含め、すべて引退することになるだろう。

2月21日から営業運転が始まった17000系。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

ちなみに、先に引退した7000系のうち40両(10両編成4本)はインドネシアの首都ジャカルタの都市鉄道に譲渡された。一部の車両は事故の影響で廃車されてしまったが、いまも南国インドネシアで青い空の下、左右非対称デザインの7000系を見ることができる。

インドネシア・ジャカルタの都市鉄道に譲渡された7000系。【撮影:草町義和】

なお、7000系のベースとなった6000系は2018年に引退済みで、この車両も一部がジャカルタの都市鉄道に譲渡された。ほかに6000系ベースの車両としては半蔵門線の8000系電車があるが、同線でも18000系電車という新型車両を2021年度から2022年度にかけて導入する計画がある。