最長片道切符の起点・終点「南北逆転」35年ぶり九州→北海道、考え方次第で変化なし



JR線の「最長片道切符」の方向が変わる模様だ。現在は日本最北端の駅として知られるJR北海道の宗谷本線・稚内駅から、JR九州の西九州新幹線と大村線が乗り入れる新大村駅(長崎県大村市)に向かう「南行」。4月からは大村線の竹松駅を起点に、JR北海道の函館本線・室蘭本線が乗り入れる長万部駅(北海道長万部町)を終点とする「北行」になる。

新大村駅は1年半で最長片道切符の終点駅の座を降りる。【撮影:草町義和】

最長片道切符は一筆書きで最も長いルートになる片道乗車券のこと。規則上は途中で同じ駅・区間を一度しか通ることができず、一度通った駅にぶつかったところで終点になる。ルートは利用する鉄道事業者の範囲や規則の解釈などによって変わるほか、路線の開業・廃止によっても変化する。

JR旅客鉄道線のみ利用する場合で規則解釈上の異論がない最長片道切符のルートは、2022年9月22日までは稚内駅からJR九州の肥前山口駅(現在の江北駅)までの南行ルートだった。同年9月23日の西九州新幹線・武雄温泉~長崎の開業でルートが変わり、終点駅が33年ぶりに変わって新大村駅になった。

昨年2023年8月28日、日田彦山線・添田~夜明(福岡県・大分県)が鉄道としては実質廃止(バス高速輸送システム=BRTに転換)されたのに伴いルートが変わったが、起点駅と終点駅は変化なし。今年2024年3月16日には、北陸新幹線の延伸開業とそれに伴う北陸本線の経営分離で金沢~敦賀の経路が北陸本線から北陸新幹線に変わるが、この時点でも「稚内→新大村」のままとみられる。

2024年3月31日までの最長片道切符(JR線のみ)のルート。【作成:鉄道プレスネット】
現在の最長片道切符の起点駅は日本最北端駅の稚内駅。【画像:ジョーナカ/写真AC】

一方、2016年の水害で運休し代行バスが運行されている区間を含むJR北海道の根室本線・富良野~新得が2024年4月1日に廃止されて代替バスに移行することから、この区間は最長片道切符のルートに組み込むことができなくなる。

これにより北海道内のルートが大きく変化。稚内駅から本州方面に向かうルートより、本州方面から道内を一周するルートのほうが長くなる。このため終点駅は長万部駅に変わり、起点駅も竹松駅に変化。竹松駅は現在の終点駅で同じ大村市内の新大村駅から一つ隣の駅で、南行から北行に逆転する。

2024年4月1日以降の最長片道切符のルートは九州から北海道に向かうルートに変わる。【作成:鉄道プレスネット】
新たに最長片道切符の起点駅になる大村線の竹松駅。新大村駅の一つ隣の駅だ。【撮影:草町義和】
竹松駅で発車を待つ大村線の普通列車。【撮影:草町義和】

営業上の設定距離(営業キロ)で見た場合、現在の最長片道切符(稚内→新大村)は約1万600km。4月1日からの最長片道切符(竹松→長万部)は100kmほど短い約1万500kmになる。起点駅が変わるのは1995年9月以来、29年ぶり。新大村駅はわずか1年半で終点駅の座から降りる。南北逆転は1989年5月以来、35年ぶりだ。

新たに最長片道切符の終点駅になる北海道の長万部駅。【撮影:草町義和】
長万部駅に到着した函館本線の普通列車。【撮影:草町義和】

ちなみに、運賃計算で使用する「運賃計算キロ」をベースに考えた場合、方向は従来通り「稚内→新大村」の南行で、北海道内のルートが一部変わるだけになる。

JR線の運賃・料金は一部を除いて実際の距離とほぼ同じ営業キロに基づき算出するが、幹線と地方交通線をまたぐ区間では、地方交通線で営業キロをほぼ1.1倍した「換算キロ」か「擬制キロ」を適用。幹線の営業キロと地方交通線の換算キロ(擬制キロ)を組み合わせた運賃計算キロで運賃を算出する。地方交通線の割合が高いルートだと運賃計算キロが長くなり、営業キロベースと運賃計算キロベースで最長片道切符のルートが変わる場合もある。

最長片道切符を使う旅行を実践する人はそう多くなく、もともと趣味性の強いもので絶対的なルールがあるわけでもない。どちらのルートで旅行するかは実際に最長片道切符を使う人の考え方次第だ。

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