「最長片道切符」の終点駅が変わる。現在の終点駅はJR九州の肥前山口駅(佐賀県江北町)だが、西九州新幹線が開業する9月23日には同新幹線と大村線に新設される新大村駅(長崎県大村市)が終点駅になる見込み。終点駅が変わるのは33年ぶりだ。
最長片道切符は一筆書きで最も長いルートになる片道乗車券のこと。規則上は途中で同じ駅・区間を一度しか通ることができず、一度通った駅にぶつかったところで終点になる。1979年に発表された宮脇俊三氏の紀行文『最長片道切符の旅』や2004年にNHKで放送された最長片道切符の旅行番組などで知られるようになった。
片道乗車券の最長ルートは利用する鉄道事業者の範囲や規則の解釈などによって変わる。現在、JR旅客鉄道線のみ利用する場合で規則解釈上の異論がないルートでは「稚内→肥前山口」が最長。日本最北端の駅であるJR北海道の宗谷本線・稚内駅からJR東日本・JR東海・JR西日本の各社線を経由し、長崎本線・佐世保線の肥前山口駅に至る。距離(営業キロ)は約1万700kmで東京からスペインの首都マドリッドの直線距離に相当。運賃額は9万円を超える。
路線の開業や廃止などによってもルートは変化しているが、終点駅は1989年5月以降、肥前山口駅のまま。起点駅も1995年9月以降は稚内駅で変わっていない。
9月23日に開業する西九州新幹線は武雄温泉駅で佐世保線と連絡。武雄温泉~諫早には新大村駅が新設され、大村線の線路にも同駅のホームが新設される。この結果、新鳥栖以遠のルートを新鳥栖→(長崎本線)→諫早→(大村線)→早岐→(佐世保線)→武雄温泉→(西九州新幹線)→新大村とすることで、距離(営業キロ)を18.5km延ばすことが可能になる。
JR九州は「(新鳥栖→諫早→早岐→武雄温泉→新大村のルートは)一筆書きになっており片道乗車券の発券は可能だ」と回答。規則上の特例が今後新設されるなどしない限り、終点駅は33年ぶりに肥前山口駅から新大村駅に変わる。起点駅と終点駅のどちらか一方が変わるケースも27年ぶりだ。また、肥前山口駅は最長片道切符の終点駅でなくなる9月23日、江北駅に改称される。
肥前山口駅の北口駅前広場には2004年、「JR最長片道切符の旅 ゴール 肥前山口駅」と記された記念碑が建立された。この碑を管理する江北町の地域振興課は取材に対し「肥前山口駅が最長片道切符の終点駅でなくなることは把握しており、残念だなと思っていたところ。碑はNHKの旅行番組の放送を記念して建立したもので、撤去するといったことはいまのところ考えていない」と話した。
《関連記事》
・西九州新幹線の開業で「3新駅」温泉・新在併設・車両基地 9月23日ダイヤ改正
・肥前山口駅が「江北駅」に改称 109年ぶり2度目、長崎新幹線の開業と同時 JR九州