日本初の鉄道「高輪築堤」2027年度に公開へ 整備イメージ公表、AR・VR活用も



JR東日本は5月31日、東海道本線(東海道線・山手線・京浜東北線)の田町~品川の再開発エリアで出土した「高輪築堤」について、一部を整備して現地保存し、2027年度から公開すると発表した。

明治末期~大正初期の高輪築堤とみられる写真。出土した信号機土台部は蒸気機関車の脇に見える腕木式信号機のあたりにあったと推定される。【画像:public domain】

同社は文化財保護法に基づき保存活用計画を策定。5月26日に文化庁長官の認定を受けた。計画書などによると、第7橋梁部を含む史跡指定地2カ所を現地保存。信号機の土台部は移築して保存する。それ以外の場所は「記録保存調査範囲」とし、現地保存は行わない。

高輪築堤の位置や保存範囲など。【画像:JR東日本】
第7橋梁部の公開イメージ(複合棟IIの2階プロムナードから眺める)。【画像:JR東日本】
公園部の地下から高輪築堤跡を眺めるイメージ。【画像:JR東日本】

発掘時に消失していた部分の再現を検討し、かつての築堤上は現地で発掘された築石を活用したランドスケープとして「歴史を感じる空間」を創出する。また、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの技術を活用し、開業当時の鉄道が走る景観の擬似的な再現を検討する。

第7橋梁部の公開イメージ(複合棟IIの1階から)。AR・VRのゴーグルを着用した人が描かれている。【画像:JR東日本】
文化創造棟3階テラスから公園部の高輪築堤跡を眺めるイメージ。【画像:JR東日本】

このほか、高輪築堤を含む鉄道開業当初の新橋~横浜の約29㎞の記録について、史資料調査や研究成果の収集・整理を実施。この調査で得られた知見を踏まえ、高輪築堤や鉄道の歴史を知ることができる情報発信施設などを整備する。

今後は品川開発プロジェクト第1期オープンの2025年度までに整備基本計画の策定や詳細設計を実施し、必要に応じて史跡の整備工事も行う。第1期オープン後に掘削を実施。露出後は、くいや築石、土を保存するための基本対策を行いながら工事を進めて2027年度の現地公開を目指す。

高輪築堤は、日本初の本格的な鉄道として1872年に開業した新橋(のちの汐留)~横浜(現在の桜木町)の官設鉄道の構造物。のちの車両基地の整備や線路配線の変更で地中に埋まった。

JR東日本は2010年代に入って車両基地を廃止し、跡地の再開発を計画。複合施設の高層ビルや文化施設などを設けた「TAKANAWA GATEWAY CITY」(高輪ゲートウェイシティ)として、2025年3月に一部がオープンする予定だ。2020年3月には高輪ゲートウェイシティのアクセス駅として山手線・京浜東北線の高輪ゲートウェイ駅が暫定開業している。

高輪ゲートウェイシティのイメージ。【画像:JR東日本】
高輪ゲートウェイシティ各施設の配置イメージ。【画像:JR東日本】

造成工事が進められていた2019年以降、再開発エリアで高輪築堤が出土し、保存の可否や範囲、方法などが議論された。有識者らは全面保存を要望したが、JR東日本は2021年3月、再開発計画を見直して高輪築堤の一部の現地・移築保存を決めた。同年8月には旧新橋停車場跡の史跡指定を拡張する形で高輪築堤が国の史跡として指定されている。

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