静岡県知事「リニア神奈川県駅」など視察 神奈川~山梨の先行開業「8割方あるが…」



静岡県の川勝平太知事は9月7日、神奈川県相模原市内でリニア中央新幹線の工事現場を視察した。知事は神奈川県駅(仮称、相模原市)~山梨県駅(仮称、甲府市)の先行開業の可能性は「8割方あると思う」としつつ、車両基地の工事が進んでいないことを挙げて課題が多いとの認識も示した。

神奈川県駅を視察する川勝知事(左から二人目)。【撮影:草町義和】

川勝知事がこの日視察したのは、相模原市内の藤野トンネルの斜坑(大洞非常口)と神奈川県駅の工事現場。神奈川県駅では小雨が降るなか、地下深く掘り込まれた同駅の北側にある視察台から工事現場を眺め、JR東海関係者の説明に耳を傾けていた。

川勝知事は2020年、山梨県内の一部区間(42.8km)がリニア実験線として整備済みであることを念頭に品川(東京都港区)~山梨県駅の先行整備を提案したことがある。今年2022年8月23日の会見では、それより短い神奈川県駅~山梨県駅の先行整備の可能性について言及。その理由として品川駅近くのトンネル工事が掘削機械の故障で中断していることを挙げていた。今回の視察も神奈川県駅~山梨県駅の先行整備の実現可能性を探ることが目的の一つだった。

視察終了後、川勝知事は相模原市役所を訪ねて本村賢太郎市長と非公開で面談。面談後の記者会見で知事は、藤野トンネルの斜坑と神奈川県駅の工事が「順調に進んでいる。安心した」とし、「(先行開業の)可能性は8割方あると思った」と話した。

その一方、視察の途中で通った関東車両基地の予定地について「造成はまったくされていない。宇野さん(JR東海の宇野護副社長)に直接聞いたら仮に来年2023年から造成に入ったとしても11年かかる。車両基地がないと営業ができない」と話した。

中央新幹線・品川~山梨県駅のルート。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

2023年の11年後は2034年で、品川(東京都港区)~名古屋の部分開業予定時期(2027年)の7年後。知事は「車両基地の予定地の真ん中を通ったけど、見た限り(用地買収済みなのは)1割くらい」とし、車両基地が完成しない限り、品川~名古屋の部分開業も神奈川県駅~山梨県駅の先行開業も厳しいという認識を示した。

相模原市の本村市長は「我々は品川~名古屋の2027年開業を目途に進めてきた。その考えは変わらない。(先行開業は)私自身は考えていない。ただ知事からの思いというもの、理論的な説明もいただいたので研究等々が必要だと思っている」と話した。

川勝知事(左)と本村市長(右)。【撮影:草町義和】

リニア中央新幹線は東京都から甲府市付近、名古屋市付近、奈良市付近を経由して大阪市を結ぶ新幹線鉄道の建設線。JR東海は2027年の品川~名古屋の部分開業を目標に工事を進めている。

建設ルートのうち山梨県から長野県にかけては、全長約25kmの南アルプストンネルを建設。途中で静岡県北部の山岳地帯を通り抜ける。静岡県は同トンネルの建設で大井川の水量が減少するなどの懸念があるとして県内区間の本格着工を認めておらず、JR東海との調整が難航。2027年の部分開業は困難な情勢になっている。

その一方で静岡県は2022年7月、中央新幹線の早期建設を求める沿線自治体の建設促進期成同盟会に加盟。8月のオンライン総会で川勝知事は2027年の品川~名古屋の部分開業、2037年の名古屋~大阪の開業を目指す同盟会の立場を共有すると表明している。

地下30mに島式ホーム2面4線

神奈川県駅は品川駅と山梨県駅のあいだに設けられるリニア中央新幹線の駅。品川駅からの距離は約35kmで、JR横浜線・相模線と京王相模原線が乗り入れる橋本駅の南側に設けられる。現在工事中の品川~名古屋の中間駅としては唯一の地下駅になる。

深く掘り込まれた神奈川県駅。【撮影:草町義和】
地上から約20mまで掘削が完了した。【撮影:草町義和】

駅施設は全長約680mで幅は最大約50m。深さは約30mの計画。改札を地下2階に設け、地下3階には島式2面4線のホームを設ける。地上は商業スペースとして活用することが考えられており、相模原市が中心になって検討している。2019年に着工し、地上から下へ掘り進む開削工法で工事が進められている。2022年9月時点で地下約20mまで掘削が完了した。

品川~橋本の所要時間は現在、在来線で1時間以上、東海道新幹線~横浜線のルートでも50分ほどかかる。リニア中央新幹線を使うと約10分に短縮される見込みだ。

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