大手私鉄「回数券廃止」過半数超えへ 4月までに11社が終了



ICカードの普及などによる利用者の減少で普通回数乗車券(回数券)の発売を終了する鉄道が増えている。JR旅客6社は昨年2022年11月までに発売を終了。大手私鉄も今年2023年4月には回数券を発売しない会社が16社中11社になる。

2023年2月限りで回数券の発売を終了する東急電鉄。【撮影:草町義和】

回数券は11枚セットの乗車券で有効期間は3カ月。発売額は普通運賃の10倍で、1枚分がお得になる計算だ。大手私鉄では2012年に名鉄が発売を終了。2016年には京阪電鉄が大津線の回数券のみ発売を終了したが、回数券の廃止が大きな流れになることはなかった。

しかし2020年に入ると、小田急電鉄と京阪電鉄(大津線を除く全線)が回数券の発売を終了。小田急電鉄は回数券の代替として割引率を高めた10枚セットの企画切符「小田急チケット10」を発売したが、これも2022年に発売を終了した。2021年は東武鉄道と西鉄が発売を終了。2022年には相鉄と阪神電鉄が発売を終了した。

今年2023年は、まず東京メトロと東急電鉄が2月28日に発売を終了する予定。これにより回数券を発売しない大手私鉄は過半数の9社になる。

続いて3月17日には西武鉄道が発売を終了。4月30日には阪急電鉄が発売を終了する予定で、終了会社は合計11社になる。回数券を廃止しておらず廃止の発表もしていない大手私鉄は、1月31日時点で京成電鉄・京王電鉄・京急電鉄・近鉄・南海電鉄の5社だけになった。

京成電鉄など大手私鉄5社は回数券の発売終了を発表していない。【撮影:草町義和】

回数券の発売を終了した各社は、利用できる日時を制限して割引率を高めた時差回数乗車券や土・休日割引回数乗車券も同時に発売を終了しているが、障害者用の割引回数乗車券は継続している。通学用の割引回数乗車券は終了または終了を計画している会社と継続している会社に分かれる。

回数券は発売終了日までに購入すれば、発売終了後も有効期間まで利用できる。有効期間が設定されてない東急世田谷線の回数券は、発売終了後10年間(2033年2月28日まで)利用できる。

回数券の代替サービスとして、各社はICカードの機能を活用したポイント還元サービスなどを展開。阪神電鉄の場合、ICカード「ICOCA」を利用して1カ月間に同一運賃区間を11回以上乗車すると、同一運賃区間ごとに11回目以降の乗車運賃の合計額の10%分をポイントとして付与している。

■回数券の発売を終了した大手私鉄(発売終了日)

東武鉄道:2021年9月30日
小田急電鉄:2020年3月31日
相鉄:2022年12月30日
名鉄:2012年2月29日
京阪電鉄(大津線):2017年3月31日
京阪電鉄(大津線以外):2020年12月30日
阪神電鉄:2022年9月30日
西鉄:2021年7月31日

■回数券の発売終了日が決まっている大手私鉄(発売終了予定日)

西武鉄道:2023年3月17日
東急電鉄:2023年2月28日
東京メトロ:2023年2月28日
阪急電鉄:2023年4月30日

■回数券の発売終了を発表していない大手私鉄

京成電鉄
京王電鉄
京急電鉄
近鉄
南海電鉄

《続報記事》
南海電鉄・泉北高速鉄道の回数券「発売終了」3月31日まで 大手私鉄は残り4社に(2023年2月7日)

《関連記事》
JR「回数券」全廃が決定、JR北海道も11月限りで発売終了へ
相鉄の回数券「販売終了」12月に 代替サービスの導入を検討