JR北海道「9期連続」全線区で赤字 行動制限など緩和で赤字幅は130億円縮小



JR北海道は6月9日、昨年度2022年度の線区別の収支と利用状況を公表した。全線区合計の営業損益は659億6000万円の赤字だった。9期連続の赤字だが、コロナ禍による行動制限や水際対策の緩和などで全体の赤字幅は縮小。前年度2021年度に比べ130億4600万円縮小した。しかしコロナ禍前のレベルには回復しておらず、依然として厳しい状況が続いている。

新型車両のH100形が導入されたJR北海道の普通列車。【画像:中村昌寛/写真AC】

札幌圏の4線区は除雪費の増加などで営業費用は15億5800万円の増加。しかし千歳線・室蘭本線の白石~苫小牧を中心に利用者が増えて営業収益は92億4900万円増加し、これにより営業損失は76億9100万円縮小した。

札幌圏4線区の経営推移。【画像:JR北海道】

北海道新幹線・新青森~新函館北斗は動力費の増加などで営業費用が3億3900万円増加したが、利用者の増加で営業収益は23億2100万円増えたことから、営業損失は19億8100万円縮小した。

北海道新幹線の経営推移。【画像:JR北海道】

利用者が非常に少なく鉄道廃止・バス転換を基本に沿線自治体などと協議を進めてきた「赤線区」(輸送密度200人未満)は、留萌本線・石狩沼田~留萌の廃止を前に利用者が増加したため、営業収益も4300万円増加。営業損失は1200万円縮小した。

「赤線区」の経営推移。【画像:JR北海道】

宗谷本線や釧網本線など、上下分離方式の導入などによる鉄道維持を想定している「黄線区」(輸送密度200人以上~2000人未満)は、トロッコ列車やSL列車などの利用が増え、営業収益は4億7600万円の増加。新型車両の追加導入などで営業費用は増加したが、全体の営業損失は2億4200万円縮小した。

「黄線区」の経営推移。【画像:JR北海道】

営業損失が拡大した線区は、根室本線の富良野~新得と帯広~釧路、石北本線・新旭川~上川、富良野線・富良野~旭川の4線区。根室本線・帯広~釧路の場合、利用者の増加で営業収益は1億6000万円増えたが、橋梁の修繕や新型車両の導入などで営業費用が5億3300万円増加し、営業損失も3億7300万円拡大した。

営業損失が最も大きかったのは北海道新幹線(128億7700万円)で、これに札幌圏4線区(71億6800万円)、函館本線・函館~長万部(64億7300万円)が続いた。2021年度からの改善幅は、札幌圏が最大の76億9100万円。悪化幅が最大だったのは根室本線・帯広~釧路(3億7300万円)だった。

各線区の収益・費用・損益と輸送密度。【画像:JR北海道】

100円の収入を得るのにかかる費用の指数(営業係数、管理費込み)では、最小が札幌圏の120で、これに函館本線・岩見沢~旭川(200)、室蘭本線・室蘭~苫小牧(209)が続いた。最大は根室本線の富良野~新得間(一部バス代行輸送)で、100円の収入を得るのに2786円かかった。北海道新幹線は287だった。

輸送密度は札幌圏の線区が1万~2万人台で上位1~4位を占め、函館本線・小樽~札幌の2万8918人が1位だった。5位は函館本線・岩見沢~旭川(6164人)、6位は室蘭本線・室蘭~苫小牧(5026人)だった。

各線区の収支と営業係数。【画像:JR北海道】

営業損失の縮小幅は、観光・出張の利用が多く営業集積の規模が大きい線区が大部分を占めており、とくに空港アクセスの利用などが増加した札幌圏が全線区合計の半分以上となっている。一方、コロナ禍が本格化する前の2019年度との比較では、営業収益・輸送密度ともに8割台の水準にとどまった。営業損失は原油価格の高騰などの影響もあり、合計で107億7700万円拡大した。

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