北海道新幹線の函館乗り入れ「6月予算に調査費」新市長 費用は過去試算の3~5割か



4月23日の函館市長選挙で初当選した大泉潤市長が4月27日、市長就任後初の記者会見を市役所で行った。公約に掲げていた北海道新幹線の函館駅への乗り入れ構想の調査について、6月の予算に盛り込みたいとの考えを示した。

函館駅に乗り入れるミニ新幹線列車のイメージ。【作成:さかいあきよ、撮影:草町義和、加工:鉄道プレスネット】

大泉市長は6月の補正予算に盛り込む公約について「何を取り込んで、何を取り込まないか、きょう踏み込んで話せる段階ではない」とした。その一方、新幹線の函館駅乗り入れ構想は「6月の政策予算に調査費用を盛り込みたいとイメージしている。担当部局(企画部)と話し合いもしていないから確定的なことはいえないが、そういうイメージで進めていかなければ間に合わないと考えている」とし、調査費の早期計上に強い意欲を示した。調査費の額は規模感も含め明言しなかった。

大泉市長は1995年、函館市役所に入庁。総務部秘書課長や観光部長、保健福祉部長などを務めた。今年2023年4月の市長選に出馬。第2子以降の保育料無償化や北海道新幹線の函館駅への乗り入れ構想の調査を行うなどの公約を掲げ、現職の工藤寿樹氏の4倍となる得票で当選した。

かつて駅の位置めぐり激しい綱引き

北海道新幹線は1972年に青森市~札幌市の基本計画が決定し、1973年には同区間の整備計画が決定した。2016年、新青森駅から青函トンネルを経由し、函館市に隣接する北斗市の新函館北斗駅までの区間が部分開業。新函館北斗駅とJR在来線(函館本線)の函館駅を結ぶ新幹線アクセス列車の快速「はこだてライナー」の運行も始まった。

新函館北斗~函館は「はこだてライナー」や普通列車で15~30分ほどかかり、函館市中心部と新函館北斗駅のアクセス改善が課題になっている。2030年度末に予定されている北海道新幹線・新函館北斗~札幌の開業では函館~札幌を結ぶ在来線特急列車が廃止されるため、アクセスが現状のままなら函館から札幌方面へも新函館北斗駅での乗り換えが必要になる。

北海道新幹線・新函館北斗駅と函館本線・函館駅の位置。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

1990年代の前半には函館エリアに設ける新幹線駅の建設位置をめぐり、函館市と大野町(現在の北斗市)のあいだで激しい綱引きがあった。最終的には青森~札幌の距離を短縮できる大野町への設置が決まり、函館本線の渡島大野駅(現在の新函館北斗駅)に併設することに。こうした経緯もあり、新幹線列車の函館駅への乗り入れを求める声が以前から挙がっていた。

2005年には、北海道やコンサルタント会社の関係者などが私的に参加する研究会が乗り入れ案を作成している。渡島大野~函館に(1)フル規格新幹線を整備、(2)在来線にレールを1本追加して新幹線の列車を乗り入れさせるミニ新幹線の整備、(3)在来線に連絡列車を走らせる、の3案を想定。試算ではフル規格案で1000億円以上の費用がかかり、ミニ新幹線案も150~250億円の費用が必要とされた。膨大な費用がかかることから、当時の函館市の井上博司市長は函館駅への新幹線乗り入れは困難との考えを示していた。

大泉市長は選挙前の2023年3月に行われた候補者の討論会で、ミニ新幹線方式による函館駅への乗り入れを考えているとし、費用は有識者による試算として75億円を挙げた。この金額は、日本鉄道建設公団(現在の鉄道・運輸機構)の関東支社長を務めたことがある吉川大三氏が2月に開かれた討論会で示したものと同額。2005年の試算の3~5割になる。

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