韓国の「日本海縦貫線」まもなく開業へ 釜山~江陵の380km、その先はどうなる?



韓国で日本海沿岸地域を縦貫する鉄道がまもなく完成する。これまで鉄道交通がなかった地域も通り、沿線では観光活性化に期待がかかる。

新たに開業する東海線の延伸部。【画像:国家鉄道公団】

韓国の『朝鮮日報』などによると、12月31日に東海線の延伸部として浦項(ポハン)~三陟(サムチョク)の約160kmを結ぶ区間の開通式典が行われる。実際に営業を開始するのは翌日の来年2025年1月1日の予定だ。この区間のうち浦項~盈徳(ヨンドク)の約40kmは2018年に開業したが、工事などのため昨年2023年12月から運休中。三陟への延伸にあわせて営業を再開する。

線路の規格は1435mmの標準軌で単線・電化。この区間の開業により、既設の鉄道も含めて釜山(プサン)から江陵(カンヌン)まで全長約380kmに及ぶ日本海縦貫の鉄道ルートが完成する。

最高速度150kmの列車「ITX-マウム」が運行され、釜山~江陵を4時間40分~5時間20分で結ぶ。将来は最高速度260km/hの高速車両「KTX-イウム」が導入される見込み。この場合は浦項~三陟を1時間弱、釜山~江陵を2時間台後半で結ぶという。

東海線の位置(赤実線=今回の開業区間、赤点線=未開業区間)。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

朝鮮半島の日本海沿岸地域を縦貫する鉄道は、日本統治時代に釜山~元山(ウォンサン)を結ぶ東海線として計画され、南北両側から工事に着手した。路線名は朝鮮半島での日本海の呼称に由来する。

第2次世界大戦が終結した1945年までに南側の釜山~浦項が東海南部線として開業。北側も現在のソウルと元山を結んでいた鉄道の安辺(アンビョン)駅で分岐して襄陽(ヤンヤン)に至る東海北部線として開業した。このほか、三陟周辺では現在の東海(トンヘ)~三陟を結ぶ三陟線に相当する鉄道が開業しており、未開業区間も一部で路盤工事が完了していた。

日本の支配を脱した戦後は朝鮮半島が北緯38度線で南北に分断され、東海南部線が韓国、東海北部線が北朝鮮の鉄道に。1950年の朝鮮戦争勃発を経て1953年の休戦協定で軍事境界線が設けられ、日本海側では北緯38度線より北側に設定された。この結果、東海北部線も軍事境界線で南北に分断。戦争で施設が破壊されたこともあり、韓国・北朝鮮両国とも東海北部線を廃止した。

江陵から北上するバスの車窓(1990年)。中央に見えるコンクリート構造物は日本統治時代に建設された東海北部線の廃止区間(襄陽以北)か未開業区間(襄陽以南)の橋台と思われるが詳細な位置は不明。【撮影:草町義和】

その後、韓国では内陸部から日本海側の東海を経て江陵に抜ける鉄道が嶺東線として建設され、1962年までに開業。実際は江陵駅から約5km先の鏡浦台(キョンポデ)駅まで開業したが、同駅は1979年に廃止されている。北朝鮮では東海北部線のうち、安辺~金剛山青年(クムガンサンチョンニョン、日本統治時代の外金剛)の区間が金剛山青年線として1996年に復旧した。

嶺東線の江陵駅(1990年)。【撮影:草町義和】

2000年には韓国・北朝鮮両国が鉄道の南北再連結事業を実施することで合意。東海北部線は韓国の猪津(チェジン)駅から軍事境界線を抜けて北朝鮮の金剛山青年駅までの区間が2005年までに整備され、2007年には試運転が行われた。こうしたことから韓国では、欧州方面への物流を担う鉄道ルートとして東海線の全線整備の機運が高まり、2009年以降、浦項~三陟の工事が進められていた。

江陵から先、猪津までの区間は2027年完成の予定とされており、完成すれば北朝鮮の区間も含め東海線が全通する。しかし北朝鮮は南北分断固定化の方針に転換し、今年2024年10月には鉄道再連結事業で整備した鉄道を爆破した。新たな物流ルートの一翼を担うはずの東海線の行き先は暗雲がかかっている。

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