北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は10月9日、韓国と北朝鮮の軍事境界線をまたいで両国をつなぐ鉄道と道路を完全に遮断すると発表した。朝鮮中央通信が伝えた。
朝鮮中央通信によると、総参謀部は韓国で軍事演習が連日行われているとしたうえで「朝鮮半島に造成された緊迫した軍事的情勢は、我々の軍隊に国家の安全を守るため、断固として強力な措置を取ることを要求している」と指摘。「わが共和国(北朝鮮)の主権行使領域と韓国領土を徹底的に分離するため、実質的な軍事的措置を取る」とし、韓国と北朝鮮を結ぶ鉄道・道路を「完全に遮断し、堅固な防御構築物で要塞化する工事を行う」と発表したという。
両国を結ぶ交通路は過去の南北首脳会談の合意に基づき整備されたが、ほとんど使われていない。北朝鮮は従来の南北統一を目指す方針から南北分断の固定化にかじを切っており、交通路の遮断は分断固定化を象徴的に示す狙いがあるとみられる。
朝鮮半島は1945年の第2次世界大戦終結で日本の支配を脱したが、北緯38度線を境に南側が米国、北側がソ連の軍政下に置かれて分断。1948年には南側に韓国政府、北側に北朝鮮政府が樹立された。1950年に朝鮮戦争が勃発。1953年に休戦協定が成立し、南北を分断する軍事境界線が敷かれた。
鉄道の場合、日本統治時代の朝鮮総督府鉄道(鮮鉄)の京義(キョンウィ)線・京元(キョンウォン)線・東海北部(トンヘブクプ)線と私鉄の金剛山(クムガンサン)電鉄が軍事境界線により分断された状態に。京義線と京元線は軍事境界線の部分を除き、それぞれ韓国・北朝鮮の国鉄線として運営されている。東海北部線も北朝鮮側のみ1996年に復旧工事が完了した。
南北融和の動きが高まっていた2000年に南北首脳会談が行われ、韓国と北朝鮮は京義線と東海北部線の再連結事業を実施することで合意。復旧工事が行われ、2007年には京義線で南北直通列車が運行されたほか、東海北部線でも試運転が行われた。
京義線では韓国と北朝鮮側の開城(ケソン)工業団地を結ぶ貨物列車が走るようになったものの、2008年には北朝鮮側が列車の運行を認めないと韓国に通告して終了。東海北部線は試運転を除き営業運行が行われなかった。2018年の南北首脳会談でも再連結事業の調査で合意して試運転が行われたが、本格的な運行再開には至っていない。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は昨年2023年12月、「北朝鮮と韓国はもはや同族ではなく、敵対的で戦争中の2国間関係だ」と宣言。従来の南北統一を目指す政策を放棄し、南北分断を固定化する考えを示していた。
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