北朝鮮「鉄道機動ミサイル」どこから発射したのか 国際幹線ルートの線路?



北朝鮮が「鉄道機動ミサイル」を発射したことが話題になっている。9月16日の労働新聞や朝鮮中央テレビなどによると9月15日、北朝鮮の「鉄道機動ミサイル連隊」がミサイル発射訓練を実施。中部山岳地帯から約800km先の日本海に落下したとみられる。

朝鮮中央テレビの映像では、単線の線路上に停車した機関車1両+貨車2両編成の最後尾の貨車の天井が開き、中に搭載されていたミサイルが垂直に立てられて発射された姿がみられる。貨車というよりは発射台そのものだ。

このミサイルの発射地点はどこなのか。朝鮮中央テレビの映像と『Google Earth』の空中写真を照合したところ、ピョンナ(平羅)線のソクタンオンチョン(石湯温泉)~コチャ(巨次)間の線路上とみられることが分かった。機関車の前にあるトンネルの長さや周辺の地形などに共通点がみられる。

朝鮮中央テレビの映像(上)と『Google Earth』の空中写真(下)。トンネルの位置や長さ、周辺の地形などに共通点がみられる。

距離はソクタンオンチョン駅から約6.7km、コチャ駅から約1.8km。首都ピョンヤンのピョンヤン駅からは約150kmの地点だ。引き込み線や留置線ではなく、営業列車が走る線路上で発射訓練を行ったことになる。

ピョンナ線は朝鮮半島を横断してピョンヤンと朝ロ国境に近いラジン(羅津)を結ぶ鉄道路線。首都と日本海側の都市を結ぶというだけでなく、ロシア方面の国際幹線ルートでもある。そうした幹線鉄道の線路を使って発射訓練を行ったということは、ピョンナ線を走る営業列車がかなり少ないことを示している。

ピョンナ線と発射地点とみられる場所。【画像:OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット編集部】

ピョンナ線は直流3000Vの電化路線だが、映像を見る限りでは架線柱から架線を撤去して発射したようだ。また、レール下の砂利(バラスト)が白っぽく、最近になってバラストを入れ替えた様子がうかがえる。ミサイル発射時の衝撃に耐えられるよう、あらかじめ軌道の強化工事が行われたのかもしれない。

「鉄道機動ミサイル」はミサイルを貨車や客車に偽装し、鉄道のトンネル内に隠すことも容易と思われる。発射の兆候を捉えるのはもちろん、発射後の追跡や迎撃も困難になるのではという指摘もある。

もっとも、北朝鮮の鉄道は経済難の影響で整備が行き届いておらず、死亡者数が数千人規模の大事故も頻繁に発生している。こうした環境下で「鉄道機動ミサイル」を有効に運用できるかどうかは不透明だ。

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