JR東日本と関東の鉄道切符「磁気」→「QR」置き換えで共同 会社間またがりも対応



JR東日本と関東の鉄道会社は5月29日、QRコードを使用した乗車券(QR乗車券)を導入し、切符の裏面に磁性体を塗った従来の乗車券(磁気乗車券)をQR乗車券に置き換えると発表した。コスト削減や利便性の向上、環境負荷の低減を目指す。

磁気乗車券をQR乗車券に置き換える鉄道8社のイメージ。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

磁気乗車券をQR乗車券に置き換えると発表したのは、京成電鉄・京急電鉄・新京成電鉄・西武鉄道・東京モノレール・東武鉄道・JR東日本・北総鉄道の8社。2026年度末以降、順次置き換える。

近距離の普通乗車券について、切符の利用区間や利用日などの情報を盛り込んだQRコードを券面に印刷して発売。QRコードの読み取りに対応した自動改札機にタッチしてQRコードを読み込ませることで改札機を通過できるようにする。

現在の磁気乗車券と将来のQR乗車券の利用方法のイメージ。【画像:西武鉄道】

QR乗車券の情報や自動改札機の入出場などの利用状態は、8社が共同で運用する「QR乗車券管理サーバー」で管理する。8社によると、8社が同一のシステムを使用することで会社間にまたがるQR乗車券の発券が可能になるという。

一方、会社間をまたがる切符を発売する場合に必要な連絡運輸の取り決めについて、8社は「お客さまサービス面での調整を進めています。お客さまの利便性に配慮しつつ、検討を進めていきます」としており、連絡運輸の範囲など具体的な内容はまだ決まっていないことを示した。

QR乗車券管理サーバーの仕組み。【画像:西武鉄道】

また、8社は「8社以外の鉄道事業者とも磁気乗車券の縮小と持続可能なシステムへの移行を共同で検討しています」とし、今後もQR乗車券の「8社グループ」に参画する鉄道事業者が増える可能性を示唆した。

現在の紙の切符は、利用区間や利用日などの情報を書き込んだ磁性体を裏面に塗った磁気式のものが多く、近距離券を中心に普及。磁気式の切符を自動改札機に投入すると、自動改札機は切符の磁性体から情報を読み込み、通路の開閉を判断している。

この方式は自動改札機の機構が複雑になり、導入・維持コストが高い。機器の不具合による紙詰まりも起きやすく、サービスの低下を招いている。QRコードならICコードと同様、読取部にかざしたりタッチしたりする非接触式を採用でき、機構のシンプル化によるコスト削減やサービス低下の防止といった利点がある。

また、磁気式の切符は金属を含んでおり、リサイクルに際しては磁気層の分離と廃棄が必要。QR式に変更することでリサイクルも容易になり、環境負荷の低減にも効果がある。

8社によると、交通系ICカードと磁気乗車券の利用割合は2007年でICカードが65%、磁気乗車券は35%だった。現在はICカードが90~95%に拡大したのに対し磁気乗車券は5~10%に縮小しているという。磁気乗車券への対応は割合的にもコスト高になっている。

8社は将来、ICカードの利用率を100%近くまで押し上げつつチケットレスサービスの利用促進も図り、利用者が大幅に減っている磁気乗車券はQR乗車券化によりコスト削減を図る考えだ。

8社による鉄道切符の将来イメージ。【画像:西武鉄道】

QRコードを使用した紙の切符は2013年、スカイレール(広島市)を運営するスカイレールサービスが日本国内で初めて導入。翌2014年には、ゆいレールを運営する沖縄都市モノレールが導入し、北九州モノレールを運営する北九州高速鉄道も2015年に導入した。

ゆいレールと北九州モノレールはこれにより磁気式の切符を全廃。スカイレールは1998年の開業時に導入した日本初のICカードをQR式に置き換えたが、今年2024年4月限りで路線自体が廃止されている。

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