秋田新幹線の新仙岩トンネル「300億円増」工期も延長 JR東日本の調査まとまる



JR東日本は秋田新幹線(田沢湖線)の「新仙岩トンネル」の構想について、事業費が従来の想定より300億円高い約1000億円になることを秋田県に報告した。工期も従来の想定より延びる。秋田県が12月5日、JR東日本の報告内容を明らかにした。

仙岩峠を通る秋田新幹線「こまち」。【画像:Shirakami730/写真AC】

新仙岩トンネルは岩手・秋田県境(仙岩峠)の赤渕~田沢湖に短絡線を整備する構想。同区間の距離は現在約18kmだが、ここに全長約14kmの新仙岩トンネルを含む短絡線を整備する。秋田県とJR東日本は2021年7月に覚書を締結。JR東日本が調査を進めていた。

完成した場合は赤渕~田沢湖の距離がいまより3km短い約15kmに。所要時間が約7分短縮されるほか、天候の影響を受けにくくなることから遅延の抑制につながるなどの利点がある。JR東日本が2018年に算出した事業費は約700億円で、工期は着工から約11年としていた。

新仙岩トンネルの検討区間。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

秋田県観光スポーツ部の交通政策課によると、JR東日本は2021年10月から2024年3月までボーリング調査(4地点)と弾性波探査(3側線、5.4km)を実施。軟質な砂岩部が存在し地盤の強度が低い場所がある一方、硬質な泥岩等が分布し地盤の強度が高い場所も確認した。

その結果、JR東日本は「大幅な計画変更の必要性は認められない」としつつ「物価高騰や働き方改革の影響により事業費が増加し工期も延伸せざるを得ない」とし、事業費は2018年時点の算出より300億円増の約1000億円に。工期も従来の算出より4年延長し、着工から約15年とした。同社はJR東日本単独での整備は経営への影響が大きいとし、秋田県に対し整備・保有主体のあり方も含めた連携を要請したという。

秋田県は今後、JR東日本が示した事業費や工期を精査するとともに、事業スキームなどの検討を行う考えだ。

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