羽田空港内で進む「羽田空港アクセス線」工事 立坑掘削に向け前進



国土交通省の関東地方整備局は9月26日、羽田空港の敷地内で進めている羽田空港アクセス線(仮称)の工事状況などを明らかにした。現在は立坑の掘削に向け地盤改良工事を進めているという。

羽田空港アクセス線が乗り入れる羽田空港。【撮影:草町義和】

立坑は地下トンネルの予定地と地上を結ぶ穴で、工事機材の搬入や作業員の出入りに使われる。羽田空港内に設けられる立坑はP3駐車場から北西へ約250mの地点。開削工法で建設される羽田空港新駅(仮称)とシールド工法で建設される地下トンネルの境界上だ。

羽田空港アクセス線の空港敷地内のルート(赤点線)。開削工法で建設される羽田空港新駅とシールド工法で建設される地下トンネルの境界上(白四角)に立坑が設けられる。【画像:国土交通省】

立坑の整備に際しては立坑下の地盤を安定させるため地盤改良を行う必要がある。まず地盤改良で使うくい打ち機の組立作業を8月に実施。くい打ち機はクレーンを使って組み立てたが、上空を航空機が行き交う空港のため、くい打ち機やクレーンにも高さ制限の制約が課せられたという。

くい打ち機の組立作業の様子(2024年8月8日)。【画像:国土交通省】

こうして2台のくい打ち機が完成し、立坑底盤の地盤改良に着手。セメントに水を加えた溶液(スラリー)を立坑下の土と混ぜ合わせて安定した地盤を造る方法で工事を進めている。くい打ち機の先端には土を混ぜ合わせるための撹拌翼(かくはんよく)が取り付けられており、この撹拌翼周辺からスラリーが吐き出される。

地盤改良工事の様子(受注者提供、2024年9月6日)。【画像:国土交通省】

立坑は地表面から約20mの深さまで掘削する計画。その後、立坑からシールドマシンを搬入して空港敷地内の約1.9kmを掘削する計画だ。

羽田空港アクセス線は東京都心と羽田空港を結ぶ鉄道ネットワークを構築するJR東日本の鉄道プロジェクト。現在は休止中の東海道本線貨物支線(大汐線)を活用して山手線・京浜東北線の田町駅付近と東京貨物ターミナル駅付近を結ぶ約7.4kmの「東山手ルート」と、東京貨物ターミナル駅付近~羽田空港新駅(仮称)の約5kmを地下トンネルで結ぶ「アクセス新線」の工事が始まっており、2031年度の開業が予定されている。

羽田空港アクセス線の計画図。現在は東山手ルート+アクセス新線が2031年度の開業を目指して工事中だ。【画像:JR東日本】

アクセス新線は地下駅となる羽田空港新駅の部分を開削工法で建設。それ以外の地下トンネルは複線円形トンネルをシールド工法で建設する計画だ。シールド工法で建設する部分の全長は約4.2kmだが、このうち羽田空港敷地内の約1.9kmは空港施設として国が整備する。

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