利用者少ないローカル線で「大幅増発」JRの切符で並行バス利用可能に 岩手・山田線



JR東日本の盛岡支社は2月29日、JR山田線に並行して走る岩手県北自動車(岩手県北バス)の都市間バス「106特急・急行バス」をJRの切符で利用できるようにする実証実験を行うと発表した。山田線を実質的に「増発」する形になる。

山田線の列車。【撮影:草町義和】

実証実験の期間は4月1日から来年2025年3月31日までの1年間。期間中、山田線・盛岡~宮古を有効区間とするJRの乗車券類で「106特急・急行バス」を利用できる。

対象駅・停留所はJR東日本が山田線の盛岡駅から宮古駅までだが、上盛岡・山岸・上米内の3駅は対象外。「106特急・急行バス」は盛岡駅前(東口)・区界・松草・川内・箱石・川井・腹帯・茂市・蟇目・花原市・千徳駅前・宮古駅前の各停留所が対象だ。

JR線の乗車券や定期券などに加え、発着区間が記載されている割引切符でも「106特急・急行バス」を利用可能。「大人の休日倶楽部パス」「青春18きっぷ」などフリーパスタイプの企画切符では利用できない。JRの乗車券類を持たずに「106特急・急行バス」を利用する場合は「106特急・急行バス」の運賃が適用される。「106特急・急行バス」の切符類で山田線を利用することはできない。

盛岡~宮古の場合、所定運賃はJRが1980円なのに対し、「106特急・急行バス」は2200円。あらかじめJRの乗車券を買って「106特急・急行バス」に乗れば、実質220円の割引になる。

山田線の列車。【撮影:鉄道プレスネット(AT)】

盛岡~宮古は山田線の快速・普通列車が1日4往復と少ないのに対し、同線に並行する国道106号を走る「106特急・急行バス」は1日12往復(土曜・休日は10往復)。所要時間も山田線が2時間20~30分ほどなのに対し、「106特急・急行バス」の特急は1時間40分と大幅に短く、急行も2時間15分でやや短めだ。

もともと沿線の人口が少ないうえ「106特急・急行バス」の利便性が高いことから山田線の利用者は非常に少なく、輸送密度はコロナ禍が本格化する前の2019年度で174人。コロナ禍の2020年度以降は100人を割り込んでいる。

JR東日本盛岡支社によると、実証実験は公共交通の利用促進や利便性向上を目的に実施するもの。「106特急・急行バス」をJRの切符で乗れるようにすれば、実質的には山田線を大幅に増発するのと同じ効果がある。

鉄道の切符で鉄道に並行するバスを利用できるサービスは、JR四国と徳島バスが実施している。独占禁止法の規制を緩和する特例法に基づき共同経営の認可を受け、2022年4月から牟岐線の阿南~浅川で開始。2023年5月からは阿南~阿波海南に拡大している。

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