583系の食堂車「解体の危機」青森から千葉に移設、保存目指す



青森県内で保存されている583系電車の食堂車を鉄道車両の保存施設「ポッポの丘」(千葉県いすみ市)に移設することを目指すクラウドファンディング(CF)が、CFサイト「READYFOR」で始まった。

臨時列車や団体列車で運用されていた晩年の583系。【撮影:草町義和】

移設を目指すのは、583系特急型寝台電車の食堂車「サシ581形」1両(サシ581-31)。CFを実施している「583系食堂車保存会」の説明によると、1972年に製造され1986年に引退した。その後は青森県内で保存されているが、老朽化や保存場所の区画整備のため解体の危機にひんしているという。

CFの目標金額は1500万円で、10~11月に青森から千葉のポッポの丘まで輸送する計画。第2目標の2000万円に到達した場合は移設後6カ月以内に車体の修繕や塗装を行う。最終的には食堂部分を使用した飲食スペースの提供を目指す。支援募集期間は8月21日まで。

サシ581-31の移設に向けたCFが始まった「READYFOR」の画面。

583系は国鉄時代の1967年にデビュー。直流電化路線のほか西日本の交流電化路線に対応した581系電車と、全国の電化路線に対応した583系で構成される。座席に転換できる寝台を設置し、寝台特急だけでなく昼行の座席特急でも使えるようにしたのが特徴だ。1972年までに約400両が製造された。

老朽化のため2017年までに引退したが、先頭車のクハネ581形や中間車のモハネ582形・モハネ583形・サハネ581形が各地で保存されている。一方、食堂車のサシ581形で現存するのはサシ581-31と、かつて喫茶店として使われていた岡山県内のサシ581-34の2両のみとみられる。

京都鉄道博物館で保存展示されているクハネ581形。【撮影:草町義和】
国鉄美幸線(北海道)の仁宇布駅跡に整備された「トロッコ王国美深」で保存されているサハネ581形。【撮影:草町義和】

保存会の説明によると、583系は窓の遮光設備としてベネシャンブラインドを採用。ベネシャンブラインドを採用した車両は少なく、さらに保守が大変なことから後年になってカーテン式に改造されている。サシ581-31は製造当初のベネシャンブラインドが残っており、整備すれば全国でも珍しい装備を見学できるようになるという。

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