北陸新幹線の米原ルート「できる理由」国交省が条件を示唆 連絡会議で報告



国土交通省は6月19日、未着工の北陸新幹線・敦賀~新大阪のいわゆる「米原ルート」について、同省としての考えを示した。国交省や鉄道・運輸機構、北陸新幹線沿線の自治体で構成される「北陸新幹線事業推進調査に関する連絡会議」の第5回会合で報告した。

北陸新幹線の列車。【画像:丸岡ジョー/写真AC】

国交省は報告で、北陸新幹線は「首都圏と関西圏を結ぶことで、複数のネットワークを構築し、観光やビジネスなどの地域活性化や災害に対するリダンダンシーの確保に重要な役割を果たす路線」と位置付け、大阪に直接乗り入れない米原ルートは北陸新幹線の整備の意義がなくなるという考えを示唆した。

その一方、利便性や技術的な面から米原ルートの課題を複数挙げ、これらの課題を解決するための条件を満たせば米原ルートが実現できる可能性も示唆した。

米原ルートの利便性については米原駅での乗り換えが生じるほか、所要時間・運賃・料金が小浜・京都ルートに比べて増えることを挙げ、これらのデメリットを利用者が許容できるかどうかが実現の鍵になる可能性を示唆した。

また、福井県・滋賀県・JR西日本の3者が「小浜・京都ルートによる早期整備を求めている(米原ルートを否定)」とし、3者を説得して方針を変えさせることも実現の条件になる可能性を示唆した。

このほか、北陸新幹線は2019年から小浜・京都ルートで環境影響評価の手続きが進められていることを挙げ、この手続きを改めて米原ルートで行うことも同ルートの実現の鍵になることを示唆した。

一方、米原駅での乗り換えについては北陸新幹線の列車を東海道新幹線に乗り入れさせる方法で解決できるが、このケースでも国交省は「東海道新幹線の容量が引き続き逼迫(ひっぱく)している」「運行管理システムが異なる」「脱線逸脱防止対策の方式が異なる」を挙げて乗り入れが難しいとし、これらの課題を解決できれば乗り入れを実現できる可能性を示唆した。

東海道新幹線の容量逼迫への対応は、リニア中央新幹線の整備や東海道新幹線の複々線化が必要とみられる。運行管理システムは東北・上越・北陸新幹線が路線の分岐を念頭に置いたシステム「COSMOS」などを採用しているのに対し、東海道・山陽・九州新幹線は単一路線を念頭に置いた「COMTRAC」などを採用。COSMOSとCOMTRACを接続するためのシステムの開発が必要とみられる。

脱線逸脱防止設備は北陸新幹線と東海道新幹線で構造が異なるため、それぞれの路線の条件を総合的に加味した統一規格の設備を新たに開発し、設備の更新を図る必要があるとみられる。

北陸新幹線と東海道新幹線の脱線逸脱防防止設備の違い。【画像:国土交通省】

北陸新幹線は今年2024年3月、金沢~敦賀が延伸開業。東京から福井方面への直通列車が運行されるようになった一方、大阪・名古屋方面から福井や金沢へは敦賀駅で在来線と新幹線を乗り換える必要が生じ、乗り継ぎ利便性は低下した。

北陸新幹線・敦賀~京都の過去に検討されたルートのイメージ。【画像:国土地理院地勢図/国土交通省】

このため、北陸新幹線・敦賀~新大阪の早期整備を求める声が高まっており、過去に検討され不採用となったルートのうち建設費が安く工期が最も短いとみられる米原ルートでの整備を求める意見が浮上。石川県議会は6月20日、米原ルートの再考を求めることを決議した。

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