北陸新幹線の調査で京都地下水「伏見酒造」到達の可能性 機構「慎重にルート選定」



国土交通省鉄道局や鉄道・運輸機構、北陸新幹線の沿線自治体で構成される「北陸新幹線事業推進調査に関する連絡会議」の第6回会合が6月19日に開かれた。鉄道・運輸機構は未着工の敦賀~新大阪について、昨年度2023年度に実施した北陸新幹線事業推進調査の結果を報告。京都の市街地を流れる地下水が伏見酒造エリアに到達している可能性があるとした。

北陸新幹線の列車。【撮影:ポニー/写真AC】

実施項目は「用地関係調査」「地質関係調査」「受入地事前協議」「地下水関係調査」「鉄道施設概略設計」「道路・河川等管理者との事前協議」の6項目。従来は工事実施計画の認可後に行っていたものも含まれる。鉄道・運輸機構によると、着工後の完成・開業までの期間の短縮を図るためという。

用地関係調査では、登記簿や公図を取得し、公図と現況の食い違いや名義人などを把握。高架橋や橋梁の区間(明かり区間)になることが想定される福井県内を対象に用地リスク評価を行ったところ、大型施設(工場など)・商業店舗・集合住宅や長期相続未了の可能性のある場所、境界が未定の場所など、通常より用地確保に時間がかかる物件を確認した。

地質関係調査は敦賀~新大阪の全線で25本のボーリング調査を実施。地中で振動を起こして地層構造を推定する物理探査なども行った。ボーリング調査で得た試料から重金属の含有に関する試験を実施。トンネル掘削などで発生する残土(発生土)のうち重金属などを含むなど対策が必要な土(対策土)の含有率を約30%と推定した。

受入地事前協議は発生土の受入候補地について、自治体と事前協議を実施。陸上や海上を含め一部の受入候補地案を把握した。

地下水関係調査では京都市内で地下水の流れを調査。地下水調査を全12エリアを実施したほか、河川水調査も全8カ所で実施して採水と成分分析を行った。

その結果、深い層では京都盆地に広く分布する難透水層の下を流れて京都駅や伏見酒造エリアまで到達している可能性があることを確認。鉄道・運輸機構はこれを踏まえて「慎重に駅・ルート選定を実施し、地下水と水資源への影響を回避・低減するよう努める」としている。

京都市内の地下水の流れ(赤点線)。【画像:鉄道・運輸機構】

鉄道施設の概略設計は、難工事になることが予想される京都駅と新大阪駅での地下駅部について実施した。地質調査で得られたデータに基づき土質や地下水位などを整理し、駅本体の構造物や土留の幅・長さなどを算出。概略設計を実施するとともに概略図を作成した。

道路や河川などの管理者との事前協議は、新幹線の線路と交差することが想定される道路や河川などの物件(161件)を把握。協議に時間がかかると想定される構造物について、管理者と設計条件などについて協議した。

鉄道・運輸機構は本年度2024年度の事業推進調査も6項目の調査・協議を進め、国土交通省の鉄道局と連携して調査の深度化を図る予定だ。

北陸新幹線・敦賀~新大阪の事業範囲(赤)。【画像:鉄道・運輸機構】

北陸新幹線の敦賀駅から大阪市までは鉄道・運輸機構が建設主体となり、完成後はJR西日本が営業主体として運営する。詳細なルートは確定していないが、小浜・京都ルートの採用を前提に環境影響評価の手続きなどが進められている。駅はJR小浜線の東小浜駅付近、京都駅、JR片町線(学研都市線)の松井山手駅付近、新大阪駅に設置することが考えられている。

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