JR西日本は1月18日、新幹線と在来線で荷物輸送の実証実験を行うと発表した。新幹線ではJR東日本やJR九州と協力し、各地の特産品を輸送。在来線でも農産品輸送を行う。
北陸新幹線ではJR東日本と連携し、北陸エリアの特産品を首都圏に輸送する事業を拡大。従来はキャンペーンと連動した限定的な実施だったが、今後は新幹線の速達性・定時性を活かして継続的な提供を検討する。
山陽新幹線では2021年2月から実証実験に着手。JR九州と連携し、山陽新幹線と九州新幹線を直通する列車の車内販売準備室の空きスペースを活用し、九州エリアの特産品を関西圏に運ぶ。新大阪駅で新幹線の列車から荷物を下ろしたあと、在来線の列車に積み替えて大阪や京都などに輸送するなど、新幹線と在来線を組み合わせた荷物輸送も試行する。
岡山エリアでも農家や運送事業者と連携し、在来線の旅客列車を使った農産品輸送の実証実験を2021年1月下旬頃から実施する計画だ。伯備線の備中高梁駅で定期運転の普通列車に積み込み、岡山駅へ輸送。駅構内の店舗に運び込む。実証実験後も農産品輸送を試行し、駅での販売ニーズなどを調査するという。
JR西日本は、コロナ禍による人の移動の停滞と物の移動の活発化を機に、旅客列車を活用した荷物輸送事業の可能性を提示することで、社会課題や地域課題の解決を目指すとしている。同社の運輸収入(速報値)は、昨年2020年12月が前年12月のほぼ半分に落ち込んでおり、収入減を補う事業の確立が急務といえる状態だ。
日本の鉄道では、手荷物や小荷物など小規模な物品を運送する「荷物輸送」とし、貨物列車で運ぶ貨物とは分けている。国鉄時代は荷物専用の車両(荷物車)や荷物室と客室の両方を設けた合造車を旅客列車に連結して手荷物や小荷物を運んだり、荷物車だけで編成された荷物列車を運転したりして荷物輸送を行っていたが、宅配便の発達で荷物輸送の利用者が減少し、一部を除いて廃止された。
近年はトラック運転手の不足や環境負荷軽減の観点から、旅客列車やバスの空きスペースを活用した「貨客混載」が各地の公共交通で導入が進められている。旅客列車の貨客混載では車内販売準備室や車椅子スペースなどを活用して運んでおり、荷物車や合造車の開発・製造は行われていない。
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