芸備線「再構築協議会」設置が決定 全国初、存廃含め「あり方」議論へ



国土交通省の中国運輸局は1月12日、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(地域公共交通活性化再生法)に基づく「芸備線再構築協議会」の設置を決定したと発表した。

芸備線の列車。【画像:ぴーうさ/写真AC】

地域公共交通活性化再生法の改正(2023年10月施行)で創設された再構築協議の設置が正式に決まったのは、全国で初めて。芸備線は今後、国も参加する再構築協議会の場で存廃も含めた路線の「あり方」が議論される。

協議会の対象となる「特定区間」は備中神代~備後庄原の68.5km。ただし中国運輸局は「広域的な見地」から備中神代~広島159.1kmの全線を対象に議論するとしている。

おもな構成員は議長となる中国運輸局のほか、岡山県や広島県、新見市、庄原市、三次市、広島市、JR西日本。岡山県と広島県のバス協会なども参加する。中国運輸局は2023年度中をめどに1回目の協議会を開催する考えだ。

芸備線は岡山県から広島県にかけて中国山地を横断するJR西日本の鉄道路線。区間によって利用者数の差が激しい。2022年度の輸送密度は広島都市圏の下深川~広島が8529人で幹線クラスだが、山間部の過疎地を通る特定区間は備中神代~東城が89人、東城~備後落合が20人、備後落合~備後庄原が75人だった。

芸備線・備中神代~備後庄原の位置。【画像:JR西日本】

JR西日本と沿線自治体は2021年8月、芸備線の利用促進に関する検討会議を設置して同線の活性化策について議論してきた。しかし2022年5月、JR西日本は「特定の前提を置かず、地域公共交通の姿を速やかに議論開始したい」と表明。事実上、鉄道の存廃を含む議論への移行を求めた。

これに対し、沿線自治体は鉄道の活性化以外の議論はしないとの立場をとり、協議は難航。2023年10月、地域公共交通活性化再生法の改正で再構築協議会の制度が創設されたのを受け、JR西日本は国土交通大臣に協議会の設置を要請していた。

再構築協議会では、関係する鉄道事業者や沿線自治体が鉄道の存廃やバス転換の可否も含め、公共交通の再構築を議論することになる。協議がまとまったときは「再構築方針」を作成。この方針に基づき鉄道維持の事業や、鉄道を廃止してバスやバス高速輸送システム(BRT)に転換する事業を実施する。国は協議がまとまるよう積極的に関与し、再構築方針に基づき実施する事業に対して補助金を交付するなどして支援する。

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