JR東日本、100円得るのに「2万円」かかった路線も 輸送密度2000人未満の収支



JR東日本は7月28日、利用者が少ない線区の経営情報を公表した。対象となったすべての線区で2019年度・2020年度ともに赤字。2020年度は100円の収入を得るのに2万円以上かかった線区もあった。

陸羽東線の列車。【画像:しげあき/写真AC】

同社が公表したのは、2019年度に輸送密度が2000人未満だった35路線66区間で、災害不通の只見線・会津川口~只見と季節営業の上越線(上越新幹線)ガーラ湯沢支線は対象外。新型コロナウイルスの影響が小さかった2019年度とコロナ禍の2020年度について、各線区の収支と営業係数、収支率を明らかにした。

2019年度の輸送密度が2000人未満だった線区。【画像:JR東日本】

2019年度で赤字額が最大だったのは羽越本線・村上~鶴岡(新潟県・山形県、輸送密度1695人)で、49億900万円の赤字。これに奥羽本線・東能代~大館(秋田県、輸送密度1485人)の32億4200万円、羽越本線・酒田~羽後本荘(山形県・秋田県、977人)の27億1100万円が続いた。

2019年度の営業係数(100円の収入を得るのにかかる費用の額)は、久留里線・久留里~上総亀山(千葉県、輸送密度85人)の1万5546が最悪。2位は花輪線・荒屋新町~鹿角花輪(岩手県・秋田県、輸送密度78人)の1万196、3位は陸羽東線・鳴子温泉~最上(宮城県・山形県、輸送密度79人)の8760だった。

公表された輸送密度2000人未満の各線区の収支データ(2019年度-1)。【画像:JR東日本】
輸送密度2000人未満の各線区の収支データ(2019年度-2)。【画像:JR東日本】

全期間がコロナ禍となった2020年度の場合、赤字額の順位は2019年度と同じ。金額は羽越本線・村上~鶴岡(輸送密度697人)が52億5500万円で前年度に比べ3億円以上増加した。奥羽本線・東能代~大館(輸送密度1012人)は32億9000万円、羽越本線・酒田~羽後本荘(輸送密度645人)は27億2000万円だった。

2020年度の営業係数は順位が変動。陸羽東線・鳴子温泉~最上(輸送密度41人)の2万2149が最悪で、2位は磐越西線・野沢~津川(福島県・新潟県、輸送密度69人)の1万7706、3位は久留里線・久留里~上総亀山(輸送密度62人)の1万7074となった。

輸送密度2000人未満の各線区の収支データ(2020年度-1)。【画像:JR東日本】
輸送密度2000人未満の各線区の収支データ(2020年度-2)。【画像:JR東日本】

輸送密度は2019年度に65区間中3区間で100人を割り込んだが、2020年度は100人未満の区間が7区間に拡大している。輸送密度が最も小さかったのは2019年度が花輪線・荒屋新町~鹿角花輪の78人で、2020年度は陸羽東線・鳴子温泉~最上の41人。

JR東日本はこれまでも駅別の乗車人員や路線別の輸送密度と旅客運輸収入を公表していたが、収支や営業係数は公表していなかった。同社は各線の収支・営業係数を今回公表したことについて「地域の方々に現状をご理解いただくとともに、持続可能な交通体系について建設的な議論をさせていただくために、ご利用の少ない線区の経営情報を開示することとしました」としており、沿線自治体に対し路線の存廃や代替交通も含めた協議を求めていくとみられる。

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