東急電鉄は9月7日、鉄道線路の保守作業向けの新技術「鉄道版インフラドクター」を導入すると発表した。首都高グループが開発した道路維持管理システム「インフラドクター」を応用したもの。大手私鉄では初の導入になる。
保守作業車にレーザー計測装置や全方位カメラなどを搭載し、線路を走りながらトンネルなどの構造物をチェックする。3次元点群データや高解像度カメラの画像の解析により、トンネル壁面の浮きや剥離などの要注意箇所を効率的に抽出することができ、打音調査が必要な箇所の絞り込みもできる。
本年度2021年度は、世田谷線とこどもの国線を除く東急線の全線で建築限界(車両にぶつからないよう、標識や建物などを設置してはならない空間)の検査を行うほか、トンネル13カ所(約2.9km)の特別全般検査も行う計画だ。9月7日から東急多摩川線・池上線で計測作業を行い、9月21日からは東横線・目黒線の計測を実施。10月16日以降は田園都市線と大井町線で計測を行う予定だ。
東急電鉄によると、建築限界検査やトンネル特別全般検査は従来、技術者による目視や計測などにより実施してきた。とくにトンネル特別全般検査は現地に足場を組み立てて高所を含めたすべての部位を近接目視で検査し、打音調査や変状展開図の作成など、多くの人手が必要だ。検査精度のバラつきや技術者不足、検査費用の増加なども課題になっていた。
鉄道版インフラドクターを導入すると、現地での人による検査や計測が機械計測に代わるため、作業の効率化や検査精度の向上などが図られる。検査費用は最大で約3割減らせるという。
鉄道版インフラドクターは昨年2020年6月、東急グループの伊豆急行が導入。東急グループはほかの鉄道事業者での展開も検討していた。
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