米国高速列車「アセラ」新型車両のデビュー、さらに延期か 製造済み車両にも問題



米国の高速列車「アセラ」の新型車両導入計画が、さらに遅れる可能性が高まっている。「アセラ」を運行する全米鉄道旅客公社(アムトラック)は9月29日、監査報告書を公表。報告書は新型車両が米国連邦鉄道局(FRA)の定める要件を満たしていないなどの問題があり、さらなる遅延とコストの増大をもたらすと警告した。

「アセラ」の新型車両。【画像:アムトラック】

アセラは2000年に運行を開始した北東回廊の高速列車。最高速度は約240km/hで、ワシントンDC~フィラデルフィア~ニューヨーク~ボストンの734kmを7時間で結んでいる。アムトラックは2016年、老朽化した従来車両の更新のため、車両メーカーのアルストムに新型車両「アヴェリア・リバティ」28編成を発注。最高速度は約257km/hに引き上げられ、2021年には運行を開始する予定だった。

しかし、試験の遅れなどで運行開始はたびたび延期されており、今年2023年の5月時点でアムトラックは2024年に運行を開始する予定としていた。

「アセラ」新型車両の客室。【画像:アムトラック】
「アセラ」新型車両の運転台。【画像:アムトラック】

監査報告書によると、FRAは新型車両の走行試験を実施するための条件として、車両が安全であることを示すコンピューターモデルの作成とそれに基づく検証結果の提出を要求しているが、アルストムは検証を行わないまま製造に着手。アムトラックもこの問題への対応が遅れた。製造済みの車両にも部品の腐食などの問題が確認されているという。

《関連記事》
史上初「米・カナダ・メキシコ」3国結ぶ鉄道会社が誕生か 米鉄道「大型合併」の行方
英国の高速鉄道「HS2」2期区間が全面中止へ 1期区間に日立アルストムの車両