英国の高速鉄道「HS2」2期区間が全面中止へ 1期区間に日立アルストムの車両



英国のリシ・スナク首相は10月4日、高速鉄道「HS2」で未着工の第2期区間について、計画を中止すると保守党の党大会で表明した。BBCやザ・ガーディアンなどが伝えた。

HS2に導入される高速車両のイメージ。【画像:HS2社】

HS2は英国の南北を結ぶ高速鉄道。まず首都ロンドンと第2都市バーミンガムを結ぶ200km弱の区間を第1期区間として整備し、バーミンガム~イースト・ミッドランズ・パークウェイ~リーズとバーミンガム~マンチェスターの2方面を第2期区間としていた。

最高速度は360km/h。ロンドン~バーミンガムの所要時間は1時間20分ほどだが、HS2が開通すると50分ほどになり約30分短縮される。

事業費の見込みは2012年時点で327億ポンドとされていたが、2015年時点では560億ポンドに増大。2020年時点では2012年の見込みの3倍以上となる1060億ポンドとされた。この年に第1期区間が着工したが、翌2021年には第2期区間のうちイースト・ミッドランズ・パークウェイ~リーズの計画が中止された。

工事中の第1期区間も工事が遅れているほか、物価の高騰や環境対策への追加投資などで事業費が膨張。現在の事業費は710億ポンドとされているが、これは2019年時点の物価に基づく見込みで、その後の資材・人件費の高騰でさらに増大するとみられる。

今回、スナク首相は事業費の増大や第1期区間の工事の遅れを受けて方針を転換。マンチェスター方面を含む第2期区間の全面的な計画中止を表明した。スナク首相は代替策として、ミッドランドの鉄道整備やリーズの路面電車システムの構築、道路の改修、バス網の整備などに約360億ポンドを投じると話した。

HS2の路線図。第1期区間(赤)が工事中。未着工の第2期区間(青)が全面的に中止される。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

日立製作所グループの日立レールとフランス・アルストム社の共同事業体「HAH-S」は2021年12月、HS2に導入する高速車両(54編成)の設計・製造・保守を受注した。契約金額は19億7000万ポンド。この契約は第1期区間向けのため、第2期区間の中止は直接影響しないとみられる。一方で第2期区間の整備に伴う追加受注の可能性は低くなった。

※記事を差し替えました。(2023年10月7日23時46分)

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