西武鉄道、無線式列車制御「全線導入」目指す 多摩川線で「西武式CBTC」実証実験



西武鉄道は1月18日、西武多摩川線で次世代型信号保安システム「無線式列車制御(CBTC)」の実証実験を実施すると発表した。将来の西武線全線への導入を目指す。

西武多摩川線の列車。【撮影:草町義和】

西武鉄道が実証実験を行うのは「西武式CBTCシステム」と呼ばれる信号保安システム。列車情報装置を活用して無線式列車制御システムを構築する。

列車情報装置は地上と車両のあいだの無線通信により列車の種別を認識し、これにより踏切の鳴動時間を調整するもの。西武鉄道の全車両に導入されているほか、西武線に乗り入れる他社の車両も一部導入している。西武鉄道によると、導入済みの列車情報装置を活用することで効率的にCBTCシステムを実現することができるという。

まず多摩川線での実証実験に向け1月から準備工事に着手。2024年度の初頭に走行試験を始める予定だ。西武鉄道は実証実験の検証結果と鉄道各社の動向を踏まえて次世代信号システムの方式を決定する方針。2030年代の全線導入を目指すとしている。

従来型の信号保安システム(上、ATS)と無線式列車制御(下、CTBC)システムの仕組み。【画像:西武鉄道】

現在の鉄道の信号保安方式は「閉そく方式」が主流。これは線路を一定の区間ごとに細かく区切った「閉そく区間」を設けるもの。地上信号機や軌道回路を用いて閉そく区間には1本の列車しか進入できないようにし、これにより列車同士が衝突しないようにする。

CBTCはこれに代わる次世代型の信号保安装置。無線技術を活用して列車の位置と速度をリアルタイムで把握し、これにより速度を制御して列車の安全間隔を保つ。閉そく区間は設けず地上信号機や軌道回路も使わない。

西武鉄道によると、CBTCはヒューマンエラーを事前に回避し、安全輸送の向上に寄与。従来の信号保安システムに比べ必要な設備が減り、維持コストの削減と故障リスクの低減を図ることができる。高度な自動運転にも対応できるなど将来の技術革新の基盤になるという。

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