京急電鉄本線の泉岳寺~品川~北品川~新馬場間(東京都港区・品川区)を改良して踏切解消などを図る連続立体交差事業(連立事業)が2年前から始まった。完成はかなり先の話だが、工事の本格化に向けた準備が少しずつ進んでいる。5月2日、北品川駅から品川駅にかけ歩いてみた。

ホームの仮設化など進む
現在の北品川駅は相対式ホーム2面2線。駅の西北側には保線基地があり保守用車両を留置する側線がある。連立事業では現在の駅から南北方向でやや南側にずらし、東西方向ではやや東側にずらして相対式ホーム2面2線と保守線の高架駅を整備する。

駅のホームは一部が仮設化されており、高架橋の支柱整備のための準備が行われているのがうかがえる。保線基地は使用を停止していて、高架橋の工事で必要となる資材を置くためのヤードの整備工事が進められていた。


駅の旧東海道側(東側)には柵で囲まれた空き地が複数あり、柵には「連続立体交差事業予定地」と記された看板が取り付けられていた。

JRの留置線は撤去済み
北品川駅からJR線との交差部までは現在の線路の東側に高架橋を建設する計画。JR線をまたぐ現在の八ツ山橋梁の北品川寄りでヤードの整備工事が行われていた。

JR線をまたいだ先では、京急本線の脇にあったJR山手線の留置線が撤去済み。この敷地を使って高架橋が建設される。

高架下に閉鎖されたスペース
現在の京急本線はほぼ同じ高さのまま高架構造の品川駅に入っているが、連立事業ではJR線と同じ地上に線路を下ろす。駅の位置も現在地から南北方向でやや北側、東西方向でやや東側にずらす。駅構内のホーム・線路は現在2面3線(うち西側の1線は泉岳寺寄りが行き止まり)だが、連立事業により2面4線に増強される。

現在は東側の1・2番線の線路・ホームを仮設の高架に切り替えるための準備工事が行われている。かつて京急の高輪口改札の脇にあった飲食店のスペースが鉄板で覆われて閉鎖されており、この奥で仮設化の工事が行われているのがうかがえる。営業列車を走らせながら既存のコンクリート高架を撤去して鉄骨組みの仮設高架を整備することになるわけで、かなりの難工事になりそうだ。


連立事業でも一部は「地上化」
この連立事業は、泉岳寺~新馬場間の2.6kmのうち港区高輪2丁目~品川区北品川2丁目間の約1.7kmを事業区間とし、北品川駅の前後3カ所にある踏切を解消する東京都の都市計画事業。2018年12月の都市計画変更決定を経て2020年4月に事業認可された。

品川駅付近は泉岳寺寄りの引上線も含め高架構造の線路を地上化し、北品川駅とその前後は高架化する。工法は品川駅の泉岳寺寄りが仮線工法、品川駅が直上工法、品川~北品川間が別線工法、北品川駅と同駅の新馬場寄りが直上工法になる。
連立事業は通常、高架化や地下化で踏切を解消することが多い。品川駅付近に踏切がないとはいえ、線路を地上化する連立事業は珍しい。
品川・北品川の両駅ともほぼ全面的に地下化する案や高架化する案も検討されたが、全面地下化の場合は北品川~新馬場間で交差する道路に高さ制限を設ける必要があった。また、全面高架化の場合も泉岳寺~品川間で泉岳寺寄りの地下トンネルの大半を再構築する必要があり費用がかさむ。そのため、品川駅を地上に設けることで地下トンネルの再構築する部分を減らし、北品川駅の高架化で交差道路に高さ制限を設けることを回避した。
また、現在の品川駅はJR線が地上、京急本線が高架のため、JR線をまたいでいる東西自由通路は京急本線に遮られ、階段で京急本線の下をくぐり抜けている。京急本線も地上化すれば、東西自由通路は西側にそのまま延伸して京急本線と立体交差することができ、通路の完全フラット化が可能に。ひいては国道15号を挟んだところにある品川駅西側の高輪地区との一体的な開発も期待できる。

準備工事は2022年度の中頃には終了し、その後工事が本格化するとみられる。事業施行期間は2029年度末(2030年3月31日)まで。
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