戸田建設は高水圧下での大断面トンネル構築工事で、鉄道・運輸機構などの協力・指導により外殻先行型の非開削トンネル構築技術「さくさくJAWS工法」を初めて現場で適用した。
「さくさくJAWS工法」は推進工法で地中を掘削し、外殻構造部材(鋼製エレメント)を先行して形成する地下水対応型の非開削トンネル構築技術。「JAWS」は「Joint All Water Shutting」の略だ。相鉄・東急直通線(相鉄新横浜線・東急新横浜線、2023年3月に全線開業予定)のうち、東急新横浜線・新綱島駅に設けられる地下ホームの日吉寄り約35mで、この工法を適用した高さ14m・幅19mの大断面・馬蹄形トンネルが構築された。
戸田建設によると、外殻先行型は地下空間が大断面でも個々のエレメントの施工断面が小さいため、地上の建物など周辺への影響を抑えることができる。また、独自の「JAWS継手」を用いることで、従来の工法よりも施工性や止水性に優れており、さまざまな形状で建設することを可能にしたという。
「JAWS継手」は推進時の摩擦を低減させるため、従来品よりも継手内のクリアランスを大きく確保。止水性能向上のため板バネ部の機能を追加した。内部にモルタルを詰めることで、鋼製エレメントの外側鋼板と同等の強度性能を確保している。
工事手順としては、推進工法で小断面の継手付き鋼製エレメントを順次掘削して連結。鋼製エレメント間の土砂を内側から除去し、継手を拘束ボルトで固定する。続いて継手間と鋼製エレメント内に高流動コンクリートを打設し、トンネルの外殻構造部材を形成。最後にトンネル内部の地山を掘削除去し、トンネルを構築する。
戸田建設によると、「さくさくJAWS工法」は地下水位下でも薬液注入などの補助工法を省略できるほか、鋼製エレメントを本体構造物として利用できることから内部構築を省略することも可能、複雑なトンネル断面形状への対応や、従来工法と比べて施工延長の長距離化が図れるなどの利点もあり、大幅な工期短縮とコスト低減を実現できるという。
新綱島駅の日吉寄りは、トンネル上方の地上部に病院や商業ビルなどの建物が密集していて利用に制限があり、水圧も高い。そのため、周辺環境への影響が少ない「さくさくJAWS工法」が採用された。その結果、良好に外殻構造部材の構築が完了し、この工法の優位性が確認されたという。
戸田建設は今後、この工法の改善を図り、周辺環境に配慮した非開削トンネル構築技術として提供していくとしている。
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