首都圏の普通列車グリーン料金「最大2倍以上」値上げ 全24ケースを比較、値下げも



JR東日本は来年2024年3月16日のダイヤ改正にあわせ、首都圏の普通列車に連結している自由席グリーン車の料金体系を見直す。「よりわかりやすい料金体系に見直すとともにIC化やチケットレス化を推進する」として、料金の区分を大幅に変更する。

常磐線の普通列車に連結されている2階建てグリーン車。【撮影:草町義和】

首都圏の普通列車のグリーン料金は現在、利用距離のほか利用日(平日と土曜・休日)と購入時期(事前購入と車内購入)で区分されており、合計8パターン。見直し後は紙の切符でグリーン券を購入する場合の「通常料金」と、グリーン券情報をSuicaやモバイルSuicaに書き込んで購入する「Suicaグリーン料金」の購入方法2種類に分け、利用日と購入時期の区分を廃止する。

利用距離による区分は現在「50kmまで」「51km以上」の2種類だが、見直し後は長距離帯の料金を新設。「50kmまで」「100kmまで」「101km以上」の3種類に変わる。この結果、料金のパターンは2パターン減って6パターンになる。

各パターンの金額は次の通り。いずれもSuicaグリーン料金は通常料金より260円安い価格になる。

●通常料金
50kmまで:1010円
100kmまで:1260円
101km以上:1810円

●Suicaグリーン料金
50kmまで:750円
100kmまで:1000円
101km以上:1550円

現行のグリーン料金と見直し後のグリーン料金。利用日や購入時期の区分が廃止されて購入方法の区分に変わる。【画像:JR東日本】

このグリーン料金が適用されるのは、首都圏の各線区で運行されている快速・普通列車のグリーン車。JR東海エリアの東海道本線・熱海~沼津に乗り入れている普通列車のグリーン車も対象だが、この区間は特殊な扱いになる。

熱海~沼津の区間内のみ利用する場合、駅で紙の切符のグリーン券を購入する必要がある。グリーン料金は通年750円。JR東日本エリアの湯河原以東の各駅から函南・三島・沼津の各駅まで利用する場合、カードタイプのSuicaなどでSuicaグリーン券を購入する必要がある。モバイルSuicaは利用できない。

函南・三島・沼津の各駅では紙の切符のグリーン券のみ購入可能。モバイルSuicaやSuicaなどを持っている場合で函南・三島・沼津の各駅からJR東日本エリアの湯河原以東の各駅まで利用する場合、JR東日本は紙の切符のグリーン券を購入せず車内でグリーンアテンダントに申しつけるよう呼びかけている。

グリーン料金の見直しの対象になる普通列車グリーン車の運行エリア。【画像:JR東日本】

値下げになるのは6ケース

現在の料金と見直し後の料金を全24ケースで比べると、6ケースで値下げ、2ケースで据え置き。残る16ケースはすべて値上げだ。一概にいえないが、利用日では土曜・休日利用の値上げ幅が大きく、購入時期では車内購入より事前購入の値上げ幅が大きい。距離では101km以上の区間で値上げ幅が大きくなる。

紙の切符のグリーン券を購入して利用する12ケースの場合、平日に50kmまでの区間を車内購入で利用するケースでは30円の値下げ(1040円→1010円)。平日に51~100kmの区間を車内購入で利用するケースは据え置きで、それ以外の10ケースはすべて値上げだ。

値上げ幅が最大になるのは、土曜・休日に101km以上の区間に事前購入で利用するケース(800円→1810円)。見直し前の2倍以上の価格になる。

Suicaグリーン料金では12ケース中、6ケースが値下げか据え置き。値下げ幅が最大になるのは、平日に50kmまでの区間を車内購入で利用するケース(1040円→750円)で290円の値下げになる。ただし現在の車内購入は基本的に紙の切符の購入になるため、Suicaへの移行が必須。事前購入だけで比較すると、値下げされるのは平日に50kmまでの区間を事前購入で利用するケース(780円→750円、30円値下げ)だけになる。

値上げ幅が最大になるのは通常料金と同様、土曜・休日に101km以上の区間を事前購入で利用(800円→1550円)するケースで、2倍近い値上げになる。

●通常料金(紙の切符)での比較

・平日に50kmまでの区間を事購入で利用:780円→1010円(↑230円値上げ)
・平日に51~100kmの区間を事前購入で利用:1000円→1260円(↑260円値上げ)
・平日に101km以上の区間を事前購入で利用:1000円→1810円(↑810円値上げ)

・平日に50kmまでの区間を車内購入で利用:1040円→1010円(↓30円値下げ)
・平日に51~100kmの区間を車内購入で利用:1260円→1260円(据え置き)
・平日に101km以上の区間を車内購入で利用:1260円→1810円(↑550円値上げ)

・土曜・休日に50kmまでの区間を事前購入で利用:580円→1010円(↑430円値上げ)
・土曜・休日に51~100kmの区間を事前購入で利用:800円→1260円(↑460円値上げ)
・土曜・休日に101km以上の区間を事前購入で利用:800円→1810円(↑1010円値上げ)

・土曜・休日に50kmまでの区間を車内購入で利用:840円→1010円(↑170円円値上げ)
・土曜・休日に51~100kmの区間を車内購入で利用:1060円→1260円(↑200円値上げ)
・土曜・休日に101km以上の区間を車内購入で利用:1060円→1810円(↑750円値上げ)

●Suicaグリーン料金での比較

・平日に50kmまでの区間を事前購入で利用:780円→750円(↓30円値下げ)
・平日に51~100kmの区間を事前購入で利用:1000円→1000円(据え置き)
・平日に101km以上の区間を事前購入で利用:1000円→1550円(↑550円値上げ)

・平日に50kmまでの区間を車内購入で利用:1040円→750円(↓290円値下げ)
・平日に51~100kmの区間を車内購入で利用:1260円→1000円(↓260円値下げ)
・平日に101km以上の区間を車内購入で利用:1260円→1550円(↑290円値上げ)

・土曜・休日に50kmまでの区間を事前購入で利用:580円→750円(↑170円値上げ)
・土曜・休日に51~100kmの区間を事前購入で利用:800円→1000円(↑200円値上げ)
・土曜・休日に101km以上の区間を事前購入で利用:800円→1550円(↑750円値上げ)

・土曜・休日に50kmまでの区間を車内購入で利用:840円→750円(↓90円値下げ)
・土曜・休日に51~100kmの区間を車内購入で利用:1060円→1000円(↓60円値下げ)
・土曜・休日に101km以上の区間を車内購入で利用:1060円→1810円(↑490円値上げ)

横須賀・総武快速線に導入されたE235系1000番台のグリーン車(2階席)。【撮影:鉄道プレスネット】

現在の料金体系になったのは、Suicaでグリーン券を購入して各席に設けられたICカードリーダーにSuicaをタッチすることで車内改札が省略される「グリーン車Suicaシステム」が導入された2004年のこと。それまでの料金区分は利用距離だけで、「50kmまで(750円)」「100kmまで(950円)」「150kmまで(1620円)」「151km以上(1900円)」の4種類だった。

このころ、首都圏の普通列車のグリーン車は平日の通勤需要が大きく、行楽需要は小さかった。そこで利用距離の区分は50kmを境にした2種類に減らす一方で土曜・休日を平日より安くし、週末の行楽利用を促進。車内料金を高くすることでグリーン車Suicaシステムの利用を促し、検札コストの削減を目指したといえる。

近年は湘南新宿ラインや上野東京ラインなど、東京都心を通り抜けるグリーン車付きの普通列車が増えてグリーン車の運行区間が長距離化。長距離帯の料金区分が廃止されて相対的に割安感が高まったためか、土曜・休日も混雑するようになった。こうしたこともグリーン料金の見直しの背景にあるとみられる。

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