JR東日本、久留里線「一部廃止」視野に協議へ 地元の本音は「鉄道にこだわらない」?



JR東日本の千葉支社は3月9日、久留里線の一部区間について「総合的な交通体系に関する議論」を行いたいと沿線自治体に申し入れたと発表した。鉄道廃止・バス転換も視野に入れた協議が行われるとみられる。

久留里線の終点、上総亀山駅。【画像:放浪のカズ/写真AC】

久留里線は木更津~久留里~上総亀山の32.2km。房総半島の内房側と山間部を結ぶ非電化単線のローカル線だ。JR東日本は末端部の久留里~上総亀山9.6kmについて議論したいと千葉県と君津市に申し入れた。

申入書によると、久留里線全体の1日1km平均の輸送密度(2021年度)は782人で、JR東日本の発足時から約7割減少。とくに久留里~上総亀山の輸送密度は55人で、「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていない状況」という。

このためJR東日本は千葉県と君津市に対し「沿線自治体等の皆さまとともに、久留里線久留里~上総亀山間について、沿線地域の総合的な交通体系に関する議論を行いたく、協議の場について設置の検討をお願いいたします」と申し入れた。

久留里線の位置。JR東日本が議論を申し入れた区間(青)は末端の山間部になる。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

久留里線の輸送密度は国鉄時代の1977~1979年度では4308人で、1980年に公布された国鉄再建法に基づく廃止基準(4000人未満)を上回っていた。しかし道路の整備や沿線人口の減少などで利用者が減り続け、2019年度の輸送密度は1025人に。コロナ禍の2020年度と2021年度は700人台で1000人を下回った。

とくに末端側の久留里~上総亀山が少なく、JR東日本発足時点の1987年度で800人台。2018年度には100人を割り込んだ。収支面でも大幅な赤字で、2020年度は100円の収入を得るのに約1万7000円の経費がかかっている。

君津市は鉄道プレスネットの取材に対し「(JR東日本からの申し入れについて)千葉県と協議のうえ、今後の対応を検討する」と話したが、鉄道の存廃についての考えは明らかにしなかった。

沿線自治体などで構成される地元組織「JR久留里線活性化協議会」の調査業務などを受注しているイチバンセンの川西康之社長は3月9日、ツイッターで「沿線住民や企業・団体への直接ヒアリングを徹底し、本音を引き出したところ『利便性・速達性さえ確保されれば鉄道に拘らない』という声が大半でした。視野の広い利用者目線の議論が深まることを期待します」とコメントした。

■久留里線の輸送密度の推移

●木更津~上総亀山(全体)
1977~1979年度:4308人
1987年度:3126人
1992年度:3163人
1997年度:2576人
2002年度:2188人
2007年度:1781人
2012年度:1450人
2013年度:1430人
2014年度:1262人
2015年度:1233人
2016年度:1190人
2017年度:1147人
2018年度:1094人
2019年度:1025人
2020年度:737人
2021年度:782人

●木更津~久留里
1987年度:4446人
1992年度:4178人
1997年度:3422人
2002年度:2924人
2007年度:2394人
2012年度:1962人
2013年度:1945人
2014年度:1727人
2015年度:1694人
2016年度:1643人
2017年度:1591人
2018年度:1518人
2019年度:1425人
2020年度:1023人
2021年度:1091人

●久留里~上総亀山
1987年度:823人
1992年度:775人
1997年度:583人
2002年度:456人
2007年度:336人
2012年度:245人
2013年度:216人
2014年度:169人
2015年度:145人
2016年度:122人
2017年度:103人
2018年度:96人
2019年度:85人
2020年度:62人
2021年度:55人

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