近鉄「新たな観光特急」運行へ 中計明記、夢洲直通は検討継続、フリーゲージ触れず



近鉄の観光特急「しまかぜ」。【画像:としmt/写真AC】

近鉄グループホールディングス(近鉄GHD)は5月14日、同社グループの中期経営計画を策定したと発表した。計画期間は2021~2024年度の4年間。コスト構造の抜本的な見直しなどを行う。

近鉄GHDは長期計画と2023年度までの中期計画で構成される経営計画を2019年5月に策定したが、新型コロナウイルス感染症の拡大による移動需要の激減や観光需要の消失などを受け、経営計画を見直した。

鉄道関係では、駅機器の遠隔操作などによる合理化を加速させて人員を削減。2019年度末の7200人から600人減らし、2024年度末は6600人にする。今後の需要状況に対応したダイヤ改正も実施。まず2021年度に一部列車の不定期化や運転区間の短縮、廃止などを行う。2021~2024年度の設備投資計画はコロナ禍前の計画では投資額を1292億円としていたが、見直し後は577億円減の714億円とした。

鉄道の中長期戦略では、「2022年以降、新たな観光特急の運行を計画中」という文言を盛り込んだ。車両の形態や運行区間などには触れていない。

2025年日本国際博覧会(大阪万博)の会場となる夢洲地区(大阪市)と近鉄沿線の観光地を結ぶ直通列車も継続検討として盛り込んだ。近鉄線から大阪メトロ中央線の延伸計画がある夢洲まで直通列車を運転する場合、生駒駅(奈良県生駒市)を境に電圧や集電方式が変わるため、複数の電圧と集電方式に対応した車両の開発が課題になる。

鉄道・運輸機構などが開発したフリーゲージトレインの第3次試験車両。新幹線と在来線の直通を目指したが開発は事実上ストップしている。【撮影:小佐野景寿】

一方で見直し前の中期経営計画に盛り込まれていた軌間可変車両(フリーゲージトレイン)の開発には触れなかった。近鉄は2018年、2本のレール幅(軌間)が異なる線路でも直通できるフリーゲージトレインの開発推進を発表。京都線・橿原線(軌間1435mm)と吉野線(同1067mm)を経由して京都~吉野間を直通する列車への導入を目指すとしていた。

このほか、MaaS(マース)推進による2次交通との連携強化や、自動運転の研究推進なども中長期戦略に盛り込んだ。

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