岡山市などが計画、構想している路面電車のプロジェクトが足踏みしている。JR岡山駅前への乗り入れは開業が大幅に遅れ、事業費も膨らむ見通し。環状化は新型コロナウイルスの影響を受け、一時凍結する。
岡山市は2月14日、来年度2022年度当初予算案の概要を発表。総額は6263億円で、前年度2021年度当初予算に比べ2.1%の増加となった。岡山電軌が運営する路面電車の岡山駅前広場への乗り入れ整備事業は6億1200万円(うち一般会計9600万円)を計上した。
岡山電軌の岡山駅前停留場は、実際には交差点を挟んで岡山駅の駅前広場から離れている。このため、現在の駅前停留場から駅前広場まで軌道を延伸して乗り入れることが計画され、2020年3月に岡山電軌が軌道事業の特許を受けた。完成すると、JR線と路面電車の乗り換え時間が約1分30秒~3分短縮される。
当初は2022年度末の完成、2023年度の開業を予定していた。しかし「事業を精査していくなかで、建築基準法の解釈に我々のミスがあった」(2022年1月20日、大森雅夫市長)などとして、事業費は当初予定していた約43億円のほぼ倍になる約86億円に膨らむ見込みに。完成時期も大幅に遅れて2025年度にずれ込む見通しになっている。
環状化の関連費用は2022年度当初予算案では計上されなかった。この構想は大雲寺前~西大寺町間の約600mに新しい軌道を整備し、既設の軌道と組み合わせて環状化を図るもの。事業費は概算で約9億円とされている。岡山市は国・市・岡山電軌の3者が均等負担することを想定しているが、岡山電軌は採算性に課題があるとして公設民営型の上下分離方式での整備を求めている。考え方に食い違いがあることから、岡山市は本年度2021年度中に費用負担の方向性を示す考えだった。
大森市長は2022年2月14日の記者会見で、環状化について「我々が調査したところでは、コロナ前の約9割の需要があれば採算は大丈夫ではないか」としつつ、「コロナが猛威を振るっている状況で9割戻るのかどうか。そこのところが明確ではない」「凍結という言葉が適切かどうか分からないが、少し状況を見る期間が必要」などと話し、検討や協議を一時的に凍結する考えを示した。
このほか、JR吉備線(桃太郎線)を路面電車タイプの軽量軌道交通(LRT)に転換する構想もコロナ禍を受け、JR西日本・岡山市・総社市の3者は2021年2月に協議の中断を決定。大森市長は2022年1月20日の記者会見で協議の中断を継続する方針を示している。
《関連記事》
・岡山電軌「環状線化」市の都市計画審議会が承認 大雲寺前~西大寺町を単線で接続
・芳賀・宇都宮LRT「HU300形」形式名の意味は? 将来の「直通」「延伸」「増強」考慮