奈良県「近鉄奈良線の移設」「リニア接続線」検討予算の執行中止 新知事の査定受け



奈良県の山下真知事は6月12日、本年度2023年度予算で約73億5000万円分の執行を中止すると発表した。鉄道関係では「大和西大寺駅の高架化・近鉄奈良線の移設」と「リニア中央新幹線『奈良市付近駅』の早期確定と関西国際空港接続線」の調査・検討費について、一部の執行を中止する。

平城宮跡内を通り抜ける近鉄奈良線。【撮影:草町義和】

大和西大寺駅の高架化と近鉄奈良線の移設は、近鉄の大和西大寺駅を高架化するとともに平城宮跡内を貫いている近鉄奈良線・大和西大寺~近鉄奈良の線路を宮跡外の地下に移設する構想。総事業費は約2000億円と見込まれている。2023年度予算では検討費として1億2500万円が計上されていたが、おもに地下化部分での地下水位の変動予測の検討費(3180万円)について、執行を中止する。

発表では「大和西大寺駅の高架化事業については、駅周辺のいわゆる『開かずの踏切』解消のため、引き続き事業を進める必要がある」としつつ、宮跡外への移設・地下化は「見直す必要がある」とした。

奈良県は今後、大和西大寺駅の高架化のみ行い宮跡内の線路は残す事業案を新たに検討。現行案と費用対効果の比較などを行い、関係者とも協議のうえ整備方針を決定する方針だ。2023年度はそのための検討費用などのみ執行する。大和西大寺駅の高架化のみ実施する場合、総事業費は約800億円減るとみられる。

大和西大寺駅の西寄りにある踏切。【撮影:草町義和】

「リニア中央新幹線『奈良市付近駅』の早期確定と関西国際空港接続線」は2023年度予算で4500万円が計上されていたが、このうち接続線の調査・検討などの費用(3500万円)を「費用対効果の観点等」から執行を中止する。JR東海が計画しているリニア中央新幹線の奈良市付近駅の建設位置の早期確定については「引き続き、全面的に協力・推進していく」としている。

接続線はリニア奈良市付近駅と関西空港を和歌山線などJR西日本の在来線の改良や新線整備などで結ぶ構想。総事業費は1900億円の見込みだった。

国鉄電車の105系が運行されていた頃の和歌山線(2017年)。【撮影:草町義和】

山下知事は4月の知事選で大型事業の見直しを公約に掲げ、現職だった荒井正吾氏をやぶり当選。荒井県政下で推進されてきた20件のプロジェクトについて、5月に予算執行の一時停止を指示し、査定を実施した。その結果、近鉄奈良線移設と接続線を含む15プロジェクトの予算執行の全部、または一部の執行停止を決めた。

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