リニア中央新幹線「奈良市付近駅」奈良県がJRに3カ所打診 近鉄「積極的に対応」



奈良市付近に設けられるリニア中央新幹線の駅について、奈良県の荒井正吾知事は9月7日、5カ所の候補地のうち3カ所に絞ってJR東海に打診したことを明らかにした。

リニア中央新幹線に組み込まれる山梨リニア実験線。【撮影:草町義和】

奈良県が奈良市付近駅の候補地として打診したのは、奈良市内の「JR平城山駅周辺」「JR新駅周辺(八条・大安寺地区)」と大和郡山市内の「JR大和路線・近鉄橿原線交差部」。

平城山駅はJR関西本線(大和路線)の奈良~木津にある駅で、京都府との府県境の近く。付近は平城ニュータウンとして住宅地が整備されている。八条・大安寺地区は大和路線・郡山~奈良の中間に位置し、同線の高架化と新駅の設置、周辺のまちづくりが計画されている。

JR大和路線・近鉄橿原線の交差部周辺は開発されておらず、田んぼやため池が広がっている。現在は両線とも駅が設置されておらず、乗り換えることができない。

奈良県がJR東海に打診した候補3カ所(赤)と外された2カ所(青)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

中央新幹線は1973年に決定した基本計画で甲府市付近や名古屋市付近、奈良市付近が主要な経過地として盛り込まれている。中央新幹線の具体化に伴い、奈良県内では駅の誘致運動が活発化。奈良・大和郡山・生駒の3市が5カ所を候補地として提案していた。

荒井知事が今年2022年9月7日の記者会見で明らかにしたところによると、生駒市が提案していた関西学研都市の高山地区第2工区は「生駒はちょっと遠くて奈良県にとっては北に寄りすぎている」とし、奈良市が提案していたJR奈良駅・近鉄奈良駅周辺も「奈良市の中心地は発展可能性とか地下の工事が大変」とし、この2カ所を除く3カ所をJR東海に打診したという。

JR大和路線・近鉄橿原線の交差部にリニア駅を設ける場合、これらの路線とリニア駅をつなぐ「アクセス駅」の整備も課題になる。荒井知事は会見で「近鉄はこれまで『近鉄郡山駅に近いから(アクセス駅は)作らない』と非公式に言っていたが、(近鉄が運賃改定の申請に際して奈良県に提出した文書で)『アクセス駅は積極的に対応する』と言われたので、奈良県にとって近鉄の変化は大きな意味がある」と話した。

近鉄は4月に運賃の値上げを申請したが、奈良県は「サービス水準の向上や地域に必要な投資が行われないまま、運賃増による負担だけを求めるのであれば、県民からの理解は得られない」として反発。これを受けて近鉄は7月、リニア駅への対応などを含むサービス水準向上や地域投資を文書で奈良県に回答していた。

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